傾聴できる人の意外な特徴、傾聴力とは

傾聴できる人、できない人の違いなど、このブログでは傾聴スキルをマスターするために知っておくべきことをお伝えしてきました。

今回も傾聴できる人に共通する特徴を脳の習性などの切り口からも解説しています。

これを読めば、なぜ自分が上手く傾聴できないのか。

なかなか傾聴力が身につかず、上達できないのはどうしてかがわかります。

傾聴の秘訣はこれしかない

これまで何度もお伝えしてきたことですが、傾聴の秘訣はもうこれしかないんです。

つまり「相手の一番言いたいことは何か」だけに集中することです。

「相手の一番言いたいことは何かに集中する」

シンプルにこれだけに専念すればいいと、これまで何度もお伝えしてきました。

しかし残念ながら、このシンプルな原理原則を実践できない人がほとんどです。

なぜ、このシンプルな原則を貫くことができないのでしょうか。

それは一言でいうと「余計なことを考える」からです。

傾聴できない原因の9割は余計なことを考えてしまうから

相手が一番言いたいこと以外のことを、あれやこれや考え始めるから集中できないのです。

多くの人たちが、話を聞きながら同時に他のことを考えているのです。

例えばそれは「(クライエントの)何が問題なのか」とか「どんな言葉を返せばいいのか」とか、「だからあなた(クライエント)はダメなんだ」とか・・・・

これらはいずれも「相手の一番言いたいこと」とは関係がありません。

このように関係のないこと、余計なことを考え始めてしまうんですね。

ほとんどの人がこのような余計なことを考え始めてしまうために、途中から相手の話が入ってこなくなるのです。

なぜなら、人間の脳は基本的に二つのことを同時に処理できないからです。

相手の一番言いたいことは何かを考えながら、「どんな言葉を返そうか」ということを同時には考えられないのです。

「どんな言葉を返せばいいのだろう・・」と一瞬でも考えてしまうと、その瞬間相手の話や言葉、内容はインプットできなくなります。

つまり「聞いていない」「聞けていない」状態になっています。

傾聴のコツは空白をつくらないこと?

相手が話しているのに途中々々でこのような考えが浮かぶと、そこの部分は相手の話が空白になってしまうのです。

相手の話の何か所かに空白ができたままのインプットになるので相手が話し終わった時には話の全体的理解ができなくなります。

もちろん、話している人(クライエント)自身は、話している時に空白を作ってはいません。

カウンセラーに伝えたいしわかってほしいから、一生懸命に連綿と話をしています。

しかし余計なことを考えてしまうことで、聞く側が空白を生じさせてしまうのです。

だから聞き終わったところで、却ってどういう言葉で返せばいいのかもわからなくなります。

話に空白を生まずに全て正確にインプットし終われば、そこには話の全体的な理解と細部の理解とが残ります。

そこから「この話はこういうことが言いたいのか」「そうか、なるのほど」とまとまるので、しっかりとした応答へと繋がっていくわけです。

空白を作らないことが、適切な応答には必要不可欠になるのです。

つまり、余計なことを一切考えず、とにかくひたすら「一番言いたいこと(伝えたいこと)は何か」に集中するのです。

別な言葉でいえば「無心に聞く」ともいえますね。

傾聴とは無心に聞く、無邪気に聞く

この「無心」という言葉の意味は「意志・感情などの働きがないこと」だそうです。

余計な感情(イライラ・不安・焦り等)が動いたり、余計な意志(どんな言葉を返そうか、どんな助言をしようか等)がないという意味ですね。

また「無邪気であること」という意味もあります。

つまりは邪気(余計なもの)がないということ。

純粋にひた向きに、真っすぐにクライエントの話に興味・関心をもち、純粋にひた向きに、真っすぐにクライエントの話に注意を向け続ける。

無心に聞くとはそういう状態であり、理想的な姿勢ですね。

傾聴とはまさに、相手の話を無心に聞くこと、聞けることでもあります。

つまりは相手の話に集中し続けるということです。

私たちの脳は、基本的には一点集中型です。

一度に一つのことに集中すると能力を発揮するように出来ています。

クライエントの話を聞く際にも、例外ではないのです。

相手が一番言いたいことは何か。

この一点にどれだけ集中できるかが、傾聴できるかできないかを分けます。

クライエントの一言半句に注意を向け、漏らさず違わずにインプットし続ける。

これが傾聴の秘訣なのです。

様々な話(クライエント)に対して傾聴し続ける秘訣については
こちらの記事で解説しています。↓

一転集中と傾聴の共通点

例えば、仕事が出来る人は、コミュニケーションが上手な人が多いですよね。

これは仕事も会話も一点集中で処理できるからなんですね。

よく「マルチタスク」などといい、同時に複数の作業を進めることが推奨される時があります。

しかし、これは人間の脳の習性を考えると、実はとても効率が悪い。

それなのに、仕事が出来る人は、一見、同時に複数の作業をこなしているように見えますね。

しかし、よく観察してみると、一つひとつの作業をこなす場合には、一点集中でこなしていることがわかります。

一見マルチタスクにみえる作業の仕方は、一点集中を連続的に切り替えてやっているわけです。

実際に同時に複数の作業をやってみたらわかりますが、どれも中途半端に終わってしまうはずです。

なぜなら、それは私たちの脳が一点集中に向いているからです。

傾聴の場合もあれやこれやと余計なことを考えず、クライエントの話に一点集中するのが王道といえます。

そしてこの効果は一点集中で物事をやり切ったり話を聞けるようにならないと実感できません。

ですから私の所で行う個別レッスンや傾聴トレーニングでは、この一点集中のスキルアップのためのプログラムを体験して頂いています。

傾聴のコツは結論を出さないこと?

しっかりとした傾聴ができるようになるには、結論を早々に出さないクセをつけることです。

逆に言うと、多くの人たちが何か人の話を聞くとき、すぐに自分の中で結論を出しながら聞いているといえるのです。

そのようなすぐに出される結論が、傾聴にとっては実はとても邪魔になるという事実を知る人は少ないでしょう。

代表的な結論といえるものとして「正しいか、間違っているか」「 良いか、悪いか」があります。

誰かの話を聞いていると、多くの人たちはすぐに、相手が話していることが「正しいか間違っているか」「良いか悪いか」という観点でしか聞けなくなります。

その結果、相手の話に対して評価的な反応を示したり、助言や説教、ジャッジのような投げ返ししかできなくなります。

特に親が子どもの話を聞いている時、先生が生徒の話を聞いている時、そして上司が部下の話を聞いている時などに、こういうことは日常茶飯事です。

そもそも、助言というのは、相手を否定する働きかけだということをご存知だったでしょうか。

助言というのは「こうしてみたらどうですか」という働きかけです。

それはつまりは「あなたのあり方・やり方は間違っているからこうしてみたらどうですか」ということなのです。

カウンセリングの中でアドバイスをすることに慎重になるのは、そもそもこうした否定的働きかけだという前提があるからだ。

そして、中には無意識にこうした働きかけに終始する場面が見られます。

なぜそんな働きかけしかできなくなるのか?

それは相手の話を評価的に聞いたり、ジャッジするような聞き方をしているからです。

「この人の話はこうだ」という風に、自分の結論を出したがるのです。

では、なぜ多くの人たちはこのように結論を出したがるのでしょうか。

それは私たちの脳の習性にヒントがあります。

傾聴力がアップする脳の使い方とは?

私たちの脳は、答えが出ていない空白の状態を嫌います。

なぜなら、判断ができない「未知」の状態だからです。

答えが出ておらず、どうしていいかの判断もできない。

そういう状態を私たちの脳は「危険な状態」と認識しがちなのです。

だから私たちの脳は空白を埋めようとしたくなる。

その結果、相手の話を聞いている中で、早く結論を出したがるのです。

しかしながら、話を聞いている最中は結論が出せない空白の状態が続きます。

なぜなら、その話がひとつのまとまりとして話し終わった段階で、初めて話の内容や相手が言いたかったことが分かってくるからです。

特に、 カウンセリングなどで聞く複雑で微妙な話の場合は最後まで聞かなければ何が言いたかったかがわからないことが多いのです。

だから傾聴がしっかりとできるようになるには、空白は空白のまま聞いていく。

安易に結論を出さずに、最後まで聞いた上で出せる結論から考える。

そういう姿勢を確立することがしっかりとした傾聴実践の基本です。

残念ながら、ほとんどの人たちはこれができません。

なぜなら、起きたこと、人の話などに対して、すぐに結論を出すクセがついているからです。

マスメディアの情報を鵜呑みにして、それがあたかも事実のように認識する。

その情報をいろいろな人に拡散する。

でも、後で「あのニュースはフェイクだった」と知って焦る。

そういう経験はないでしょうか。

なぜこのようなことになるのかというと、先にお伝えしたようにふれた情報に対してすぐに「そうだったんだ」と結論づけてしまうからです。

その情報や噂話が確かかどうか、自分で確かめない。

自分の中で「確かだな」という納得感もない。

それなのに、ただ空白を嫌うという脳の習性に従って、とにかく何らかの結論を出したくなって出してしまう。

当然、その結論の根拠は無かったり、曖昧だったりするわけです。

根拠がない結論を出している自分に対する自覚もないし、根拠のない結論に対する違和感や気持ち悪さも感じない。

そういう感覚は様々なトラブルを生んだり、不要な問題に巻き込まれる種を蒔いていくことになります。

傾聴トレーニングで傾聴力をアップさせることに関しては
こちらの記事も参考に↓

傾聴できないから応答もできない

傾聴した後、カウンセリングで求められるのは応答です。

カウンセリングでなくとも、会話の中で応答は必須です。

相手の話を聞き終わった時点での聞き手のレスポンス。

どんな言葉を返すかによって、その後の会話(カウンセリング)の流れが大きく変わります。

つまり、傾聴はもちろんのこと、傾聴した後の応答もカウンセリングの成否を左右するのです。

では、どんな応答が良いのか。

当たり前のように教えられるのが「オウム返し」です。

しかし、これは完全な間違い。

このオウム返しによって、多くの人が迷路にはまります。

こちらの解説動画も参考にしてください↓

なぜ傾聴力のある人は情報収集にも優れているのか

しっかりとした傾聴実践をするためには、空白は空白のままにしておく姿勢が必要になります。

そして空白を埋める確かな根拠を確認できるまでは、安易な根拠のない結論を埋めることは控えなければなりません。

人の話を最後まで聞き、しかも正確に聴き続けていくことで空白に合ったピースを確実に埋めていく聞き方が必要になります。

傾聴能力の高い人が情報収集に優れていたり、観察眼に優れているのは、空白にあったピースを確実に埋めていける能力を身につけているからです。

だから、傾聴力のある人は人間関係が上手だったり、問題解決が上手だったり、情報収集に優れていたりするのです。

私がよく言う「傾聴は観察手段のひとつです」と言う所以です。

傾聴というのは、傾聴を実践するということは、あなたがが思っている以上に緻密で奥が深いことなのです。

【動画】

最後に実例を交えた「傾聴・カウンセリングの応答技法の事例」という短い動画解説もご覧ください。

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心理カウンセラー・臨床カウンセラー養成塾 塾長 鈴木雅幸(コーチ・企業研修講師)のプロフィール

台湾でも出版された「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」の著者で、心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。
コーチとしても様々な目標達成に携わる。
 詳しいプロフィールはこちら

著書「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」