ターミナルケア(終末期医療)の看護師Aさんの葛藤とは


ターミナルケア(終末期医療)の看護における看護師の葛藤、患者への気持ちの持ち方について、ある看護師の告白から考えていきます。
カウンセリングのトレーニングとして行ったロールプレイで現役看護師のAさんの葛藤について、患者との向き合い方を解説します。

【筆者プロフィール】
心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。コーチとしても様々な目標達成に携わる。
著書「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」は台湾でも出版された。
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がん疼痛看護認定看護師Aさんのロールプレイ

私の所には看護師の方も傾聴・カウンセリングの勉強に来られます。

病棟勤務の方、訪問看護の方、特養や障害者施設常駐の方など、様々です。

中には終末期医療(ターミナル期)を専門にしている看護師の方もいました。

Aさんは看護歴20年で「がん疼痛看護認定看護師」という専門の資格もお持ちでした。

緩和ケアによる痛みのコントロールなどを行える資格ということでした。

ターミナルケアということですから、数多くの「看取り」を経験してきたわけです。

Aさんは私の所で傾聴・カウンセリングを学んでいました。

そして受講者同士で行ったロールプレイの中で、こんな話をしてくれたのです。

ターミナルケアの看護と緩和ケアでの葛藤

例えば、一時的に状態が良くなり、一時退院をする患者さんがいる。

しかし、程なくして状態が再び悪化し、再入院もしくは救急搬送されてくることもある。

そんな場合の自分自身の行動と気持ちが、看護経験を積んだ結果、変化したというのです。

経験の浅いうちは、先の例のように容体悪化で再入院していた患者さんがいると、
何をおいても先ず顔を観に病室へ行ったそうです。

それこそ、非番の日であっても、休日返上で病院に行ったとのこと。

ところが、経験を積んでいくうちに、患者さんの顔を観たいという気持ちが前面に出るよりも、先ず先に「その状況だと長くはないかも」といった「見立て」が頭に浮かぶ。

そして患者さんが亡くなられた後、以前よりも精神的に引きずらなくなった。

何かそんな自分が冷たいというか、仕事としてさばいているのではないかと自分自身に対していろいろ思うところが出てくるそうです。

Aさん曰く「それは経験を積んでしっかりできるようになったのか、それとも経験は積んだがその分、人の死に慣れてきてしまったのか」と悩むというのです。

終末期医療での看護

おそらくこの話しには、多くの看護師の皆さんが自分にも経験があると共感するのではないでしょうか。

そして看護師だけではなく、ターミナルケアに携わる人たちの少なくない人たちが、大なり小なり同じような葛藤を覚えるものなのではないでしょうか。

命とか生死とか人生とか、そういったテーマと深く向き合っていくのは、このような難しさ、もどかしさ、無力さなどを経験するともいえるでしょう。

さて、Aさんがぶつかった葛藤ですが、そこに答えはあるのでしょうか?

実はこの問いに対し、私は一つの着地点をもっています。

その着地点をお伝えする前に、Aさんがなぜこのような「迷い」を持つに至ったのかですが・・・

終末期医療と心のケアのガイドライン

Aさんは見立てが冷静にできるということと、患者さんへの誠実で血の通った思いというものが、半ば相反するものであるとどこかで捉えていたのだと思います。

つまり、両者は両立しえない、相反するものであると。

だから、見立てが冷静にできればできるほど、それが冷淡さ、事務的な対応につながるのではないかと考えたのでしょう。

しかし、この見立てと誠実さは両立し得るものだといえます。

むしろ、しっかりとした見立てができるからこそ、患者に心から寄り添うこともできる。

私はそう捉えているのです。

これはカウンセリングにおいても同じことがいえます。

別のロールプレイである方がこんなことを仰っていました。

感情移入すると聞けなくなるが、しっかり聞こうとすると感情が動かなくなるというのです。

ここにも捉え違いがあって、そうではなくしっかりと聞けているからこそ感情が動いていくのです。

さらにいうと、カウンセリングでいう共感と感情移入とは、似て非なるものです。

感情移入、同情といったものと、カウンセリングにおける共感(的理解)とは感覚的にも意味合いとしても大きく違うものです。

真の共感的理解には、的確な見立てなども必要になります。

ですから、看護師のAさんの場合も同様です。

ターミナルケアと死生観

冷静な見立てを以った上で、いざ患者と向き合う時には寄り添うことに心一つに向ければ良いのです。

患者を看取るそのたびに精神的にダメージを受けていては、そもそも看護もターミナルケアも成り立ちません。

では、しっかり仕事するために心を動かさにようにするのかと考えたところに、Aさんの迷走の原因があるわけです。

そうではなく、この両者は両立し得るものであり、むしろ一体となったものなのです。

そして、さらに付け加えるならば、冷静な見立てや的確な理解をもてた方が患者や家族にしっかりと寄り添えて、より血の通ったケアにつなげていけます。

もちろん、見立てだけあってそこに心がないというのではあべこべです。

心ある対応をより確かにするために、しっかりとした見立ても必要なります。

あちらを立てればこちらが立たずといった話しでは決してないのです。

そして、そういう意味で人間、人生、命、死生観といったものを自分のものとしてしっかり築いていくこと。

その結果、確かなケア、心あるサポートによって寄り添うことが可能になると私は信じています。

Aさんも更なる試行錯誤や葛藤を経ていくその先に、自分なりの答えを見つけていくはずです。

【動画】カウンセリングの勉強法いろは

最後に、今回実施したのはカウンセリングのトレーニングの一つであるロールプレイでしたが、そもそも看護の現場でも求められるカウンセリングスキルを習得する方法について短い動画で解説しています。

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心理カウンセラー・臨床カウンセラー養成塾 塾長 鈴木雅幸(コーチ・企業研修講師)のプロフィール

台湾でも出版された「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」の著者で、心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。
コーチとしても様々な目標達成に携わる。
 詳しいプロフィールはこちら

著書「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」