カウンセリングや傾聴はオウム返しというのは間違いです。
やってみたらわかりますが、違和感と不自然さ、嫌悪感しか残りません。
もちろん、限定的にオウム返しが必要な場面はありますが、基本的には多用すべきではありません。
では、相手の話を聞いたとき、どう言葉を返せば良いのでしょうか?
以下に具体的でわかりやすく解説します。
もくじ
オウム返しは邪道?
「オウム返しと生きた応答、その違いとは?」
先日、あるIT企業の社員研修で、カウンセリングの実習を行いました。
内容は傾聴トレーニングを一日かけて実施。
合計4組のロールプレイの実技を行い、その内容を録音。
4組全ての録音記録を聴き返し、会話の内容を検討しました。
その研修で、こんな場面がありました。
その中のお一人(女性)が、とても小気味の良いロープレを披露。
仮にTさんとしましょう。
Tさんの応答は比較的オウム返しに近いものでした。
しかし、迷わずテンポよく反応されたので、他の受講者からは羨望の眼差しを受けていました。
「カウンセリングを勉強されたこと、あります?」
私はTさんにそう訊くと、人事部門の方で、しかもCDA(キャリアディベロップメントアドバイザー)の資格を持っていました。
さらに実践経験もあるとのことでした。
「それは素晴らしい、だから歯切れの良いロープレになったんですね」
私はTさんににそう言いました。
そして、こうも付け加えました。
「でも、もっと良くなりますよ」
Tさんは私のその言葉を聞いて、眼を輝かせて「はい」と言いました。
他の3組のロープレは、カウンセリングの実践経験もなければ、学習経験すらない人たちのものでした。
ですから検討内容も、そうした人たちに合わせたものでした。
ところが、Tさんは半分プロのようなもの。
そこで私もプロモードに切り替え、そのロープレの録音記録を検討させて頂きました。
時間があまりなかったので、「ここはこう応答する、理由はこう」というぐあいに、パッパッパ・・と検討を進めていきました。
CDAのTさんは熱心にメモを取っていました。
一方、他の受講者は、それまでとは違う検討の雰囲気に、半ば圧倒されているようでした。
彼女は研修終了後、わざわざ私の前にあいさつに来られ、こう言いました。
「今まで学んだこととは全く違う次元の内容でした。まさかここでこんな学習ができるなんて、本当に感謝です」
実は彼女のロープレの検討に入る前に、私はこういう指摘もしました。
「もしかすると面接では、同じ話がループすることはないですか?」
彼女は「実はそうなんです」と吐露するのでした。
私が適切な応答とその根拠を提示していくことで、彼女は自分の課題を克服するヒントを得たようでした。
では私はなぜ、彼女の面接の問題点を即座に言い当てたのか?
それは、彼女の応答の特徴にあります。
彼女は話し手の話の中から、重要だ、カギになると思った部分に反応していました。
つまり、重要でカギになると思われる言葉をオウム返ししたのです。
厳密にはオウム返しではなく、多少言葉や表現を変えていました。
だから他の受講者からも、自然で小気味よい返しに響いたのでしょう。
では、Tさんのどこが問題だったのか?
それは、Tさんが反応した”箇所”が的確ではなかったことです。
どういうことか?
話し手の話の中で、Tさんが拾った部分は、話し手の一番言いたいところではなかったんです。
養成塾でも再三お伝えしていますが、
クライエントの一番言いたいことを押さえること。
それが話し手の話の聞き方の原則です。
しかし、Tさんが重要だと思った箇所と、話し手が重要だと思った箇所とがズレていたのです。
Tさんが「ここが一番この人の言いたいことなのだろう」と思った。
しかし、実際話し手の一番言いたいことは別のものだった。
こうしたズレがあったのです。
考えてもみてください。
自分が一番言いたかったことと違うところに反応されたら、あなたももう一度、一番言いたかったことを言いたくなるはずです。
現にTさんのロープレの録音を聴き返すと、話し手は改めて自分の言いたかった所を再び話しています。
つまり、Tさんの応答の後に、もう一度同じ話をしなくてはならなくなります。
Tさんの応答は、話し手の一番言いたい箇所ではなかった。
ズレた応答を聞き、話し手はもう一度「そこではなくてこっち」と言わんばかりに一番言いたかったことについてまた話をします。
こういうことが続いてしまうので、同じ話がループするという現象が起きます。
Tさんはそこに気づけず、同じ話のループに悩んでいたのです。
このズレがなければ、ある意味、オウム返しでも通用する場合もあります。
つまり、相手の一番言いたかったことをオウム返しする。
その場合はオウム返しだけでも、ある程度、話が進展していくケースがあるということです。
しかし、私たちは、自分の言いたいことを十分に言葉にできない時があります。
自分の言いたいことを適切な言葉・表現にしきれない場合があります。
そうした時に、その言葉や表現をオウム返しされたら、話は深まりません。
逆に、より適切な言葉や表現にカウンセラーが置き換えて応答したら、当然話は進展しますし、洞察も深まっていくというものです。
わざわざあいさつに来たTさんに対し、私はそのことも伝えました。
Tさんは「ああ、そうですね、なるほど、そうだったんですね」と、私の伝えた内容に深く得心したようでした。
つまり、カウンセリングではやはり正確に聞く力と適切に応える応答力が必須なわけです。
そして、それらを可能にするためには、的確で深い理解を可能にする共感能力も必要です。
これらを可能にする正しい学習体験こそが、良いカウンセリング、有益な相談業務をも可能にします。
そして、このレベルの力を自分のものにできれば、日常の人間関係で苦労することが激減します。
オウム返しと傾聴
「オウム返しをしたら、クライエントに怒られました」
このお話は本当に多くの方から聞くお話です。
また、養成塾のロールプレイ講座でも、よく見られる光景です。
つまり、相手が話したら、それをオウム返しする。
続けて話したら、またオウム返しする。ずっとオウム返しする・・・・・
これでは、話し手がウンザリするのも無理はありません(笑)
いえ、笑いごとではないんです。
これを実際のカウンセリングや相談面接でもしているわけですから。
どういうわけか「カウンセリングではオウム返し?」という教えが日本ではかなり浸透してしまっているようです。
でも、考えてみてください。
普段の会話で、相手の言葉をオウム返しし続ける・・・などという対応をしていますか?
そんなことばかりやっていたら「バカにしてんの?」って言われると思いませんか?
それなのに、カウンセリングでは、このオウム返しを頻繁にやるようになぜかまことしやかに教えられているのです。
もちろんカウンセリングは、日常会話よりもっとデリケートで、はるかに細やかな神経と高度なスキルが求められます。
そんな状況でオウム返しを続けたらどういうことになるでしょう。
もちろん、オウム返しが全てダメだとはいいません。
むしろ「こういう場面こそオウム返しが生きる」という場面があります。
要はその時その時に最も適切だという対応ができればいいわけです。
オウム返しを頼りにするしかない学習やセラピストたち。
彼らには、ある背景が存在します。
それは
「クライエントの話にどんな言葉を返せばいいのかわからない」
という戸惑いです。
ですからカウンセリング学習で習得すべきは、様々な場面へどんな言葉や態度で対応するか、適切な対応ができる力です。
この対応力を身につければ、カウンセラーとしての土台ができ、カウンセリングの本当の素晴らしさ、奥深さを肌で実感できるようになります。
オウム返しとカウンセリング
先日のオープンセミナーでの一コマ。
参加者の方が、次のような質問をされました。
その方は、カウンセラーを目指して、勉強をされてきました。
しかし、勉強した内容に納得がいかず、自分が心から納得できることを学びたい、知りたいと言うのです。
「本当にいろいろネットで探して、ここ(養成塾)に来ました」
いろいろ探したということが、自然に強調されていました。
本当に探し続けてこられたのだな・・ということが、伝わってきました。
これ以上詳しいことは、ご本人の許可を取っていないので書けません。
しかし私はこれは多くの学習者がぶつかるテーマだと思いました。
これで本当にカウンセリングが出来るのだろうか?
現場で通用する教えなのだろうか?
あなたもこのような疑問を感じたことはないでしょうか?
そこで先ず、お伝えしたいことがあります。
それは、あなたのその疑問、違和感は「正しい」ということです。
人間、何かおかしい・・という感覚や直感は、だいたい当たっています。
日常会話では絶対にやらないことを、カウンセリングでは「王道」とされる。
そういう教えを受けたら、普通に「え?」「そうなの?」と感じるはずです。
そこまでいかなくても、なんかスッキリしない感じをもつはずです。
代表的なものが、先ずはオウム返しという教え。
日常会話でそれをしたら、どうなるでしょうか?
自分の言った言葉を相手に何度もオウム返しされたとします。
その時、あなたはどんな気持ちがするでしょうか?
正直、あまりいい気持ちはしなかったり、何か不自然さを感じませんか?
あるいは言いようのない違和感を覚えませんか?
例えばこんな感じです。
※AさんとBさんの会話
A「今日、ちょっと困ったことになった。」
B「ちょっと困ったことになったの」
A「●●のレポート、昨日が締切だったみたい」
B「●●のレポート、昨日が締切だった」
A「あれ、出さないと、単位もらえないかもしれないんだ」
B「単位がもらえないかもしれない」
A「先生がそう言っていたと思うんだ。」
B「先生、そう言ってたんだ」
A「どうしよう?」
B「どうしようか困ってるんだね」
このやり取り、どう感じますか?
場合によっては「真面目に聞いてるのかな?」とか、「バカにしてんのかな、この人」と思えませんか?
では、通常の会話だったら、どんな展開になるでしょうか?
A「今日、ちょっと困ったことになった。」
B「・・どうしたの?」
A「●●のレポート、昨日が締切だったみたい」
B「え?あのレポート、出してなかったんだ」
A「そうなんだよ。出さないと、単位もらえないかもしれないんだよね?」
B「多分、先生、そう言ってたと思うよ」
A「どうしよう?」
B「急いで書き上げて、先生に相談してみたら」
いかがですか?
このやり取り、少なくとも不自然さはないし、バカにされてる感じもしないはずです。
オウム返し連発の会話より、こちら方がよっぽど「生きた会話」です。
では、カウンセリングの観点を織り込んでみたら、上記のやり取りは、どうなるでしょう。
A「今日、ちょっと困ったことになった。」
B「困ったこと?」
A「●●のレポート、昨日が締切だったみたい」
B「出しそびれちゃった?」
A「そうなんだよ。出さないと、単位もらえないんじゃなかったっけ?」
B「それはちょっと・・・困ったことに・・」
A「・・なっちゃったなあ・・・どうしようかと思って」
B「・・う~ん・・・・」
A「・・・・とりあえず先生に相談してみようかな・・」
B「相談してから、また考えてみる?」
A「・・そうしてみるよ」
ポイントは、AさんがBさんに相談している形だけれども、Aさんが自分で問題解決に取り組む流れになっている点ですね。
Bさんは何も助言していないですが、Aさんが自分の問題として捉え、方向性を導き出していく。
そういう流れになるようBさんの応答が機能しています。
つまり「オウム返しの繰り返し」では、自然とこういう展開にはならないでしょう。
気がつくと自分で答えを出そうとしている・・・という流れが適切ということです。
オウム返しという代表的な勘違いについて取り上げましたが、他にもこのような例は一つや二つではありません。
普通に社会経験があれば「おかしい」という感覚が出てくるはずです。
そう、ここで重要なのがそうした普通の感覚、当たり前の感覚。
そうした感覚を働かせるということですね。
普通に考えて「おや?」「あれ?」「ん?」という感覚です。
思い込みや先入観なく、自然と出てくる感覚や直感。
実はこの感覚や直感は、実際にカウンセリング面接をする上でも、とても重要なんです。
クライエントの話を聞いていく中で「おや?」「あれ?」という感覚が出てくる。
思い込みや先入観なく、自然と出てくる疑問や違和感。
あるいは「ピンとくる」「なるほど」といった自然に出てくる感覚。
こうした感覚や直感を頼りにすると、問題の核心に迫れることがよくあります。
つまり、カウンセリング学習で感じた素朴な疑問、そして疑問を感じる感覚こそ、今後につながるわけです。
実際の面接のどういう場面がそれに該当するのかは、養成塾の授業の中でお伝えしています。
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本当の意味で、現場で使える傾聴を身につけたい、そのために必要なことを知っておきたいという方。
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