カウンセリングの勉強をする際に、この「共感的理解」ほど誤解されたり、きちんと教えられていなかったりするものはないでしょう。
共感的理解がなぜ必要か?その効果は?実際にはどうやったらできるのか?それぞれの場面でどのようにすれば共感的理解が実践できるのか?
こうしたことを具体的に解説できなければ、学習する側は十分に理解できないでしょう。
具体例による解説はすでにブログ記事にあげているので、今回は共感的理解の重要性と感覚について説明します。
もくじ
カウンセラーは何か役に立つことを言わなきゃいけないの?
「何かまともなことを言わなきゃ・・・・」
そうやって焦っていませんか?
カウンセリングの中でクライエントの話を聞く。
そのうちに、カウンセラーにはある焦りが出てくることがあります。
その焦りとは、クライエントに対して「何かまともなことを言わなきゃ・・・」というもの。
つまり、せっかくお金を払って自分の所にカウンセリングに来ている。
だから、少しでも役に立つこと、ためになることを言わないといけない。
そういう思いが出てくるというものです。
たしかに、カウンセラー側にしてみれば、それ相応のプレッシャーはあるでしょう。
クライエントにしてみれば、自分の人生を賭けた取り組みといえるもの。
今後の人生が、そのカウンセリングで左右されるかもしれません。
そうした期待や緊張感をもって来談されるクライエントを前にするわけです。
少しでもお役に立ちたいと思うのは、当然でしょう。
ただ、ここで大切なことは「どうお役に立つか?」です。
正直、私もカウンセリングを16年以上やってますが、そうそう「役に立つこと、ためになること」など言えないんです。
そもそも、「役に立つこと、ためになること」なんて、言えるのでしょうか?
カウンセリングをずっとやってきても、なかなかそんな場面ってないんです。
でも、結果として私たちカウンセラーは、クライエントの役に立たなければなりません。
そしてその方法は「まともなことを言う」というものではないんです。
役立つことよりもわかちあうこと(共感的理解)
むしろ、そんなことを言わなくても、クライエントは良くなっていくんです。
それは、クライエントの経験・感覚・感情などをわかちあうことです。
それこそ「わかちあい」に専念すればするほど、クライエントは良くなっていきます。
別な言葉でいうと、わかちあいとは「共感的理解」のことです。
つまり、カウンセラーが共感的理解に専念すればするほど、カウンセリングの効果が出てきます。
とにかくひたすら「わかちあい」に専念することです。
そうすれば、役に立つことを言うよりも、はるかに確かな立ち直りにつながります。
あなたは本当に共感的理解ができているのか?
もちろん、このわかちあいには、具体的な方法があります。
養成塾では、様々なケースの録音記録や逐語記録を使用して、具体的な応答、その一言一言の組み立てまで仕上げます。
抽象的な説明に逃げることは、一切していません。
私の感覚でいえば、このわかち合いがしっかりと出来れば出来るほど、カウンセリングは進展します。
わかち合いで対話が織りなされることで、クライエントの人間的成長が起きる感覚です。
クライエントの心理的変化・成長を起こすのは、この「わかちあい」だと断言してもいいでしょう。
もし、傾聴だけでは問題が解決しないとか、共感しても足りないというなら、そのほとんどのケースは、傾聴も共感も不十分であるといえます。
多くの人たちが、傾聴や共感の本質、実態を知らないまま、傾聴や共感に見切りをつけているといっていいと思います。
もちろん、情報提供が一番状況打開につながるのであれば、助言などの「役に立つこと」を伝えることは有効です。
しかし、クライエントの心理的な変化・成長を発端に、人間的な変化・成長にまでつなげるには、傾聴や共感は必須です。
傾聴にしても、共感(的理解)にしても、これらは非常に奥が深いものです。
真の共感的理解?衝撃的だった師匠吉田哲のカウンセリング
私が初めて師匠である吉田哲の面接にふれたときは、衝撃でした。
それは、吉田のあるカウンセリング面接の録音と逐語です。
吉田に師事して半年くらいした頃でしょうか。
授業が終わってすぐに、私は吉田に呼び止められました。
そして、吉田は自分の面接の録音と逐語のコピーを数回分まとめて私に手渡し、こう言いました。
「これを聴いて、鈴木さんがどう感じるか、教えて欲しい」
家に帰ってすぐに、その記録を、逐語を片手に聴きました。
・・・・衝撃でした。
吉田の応答、その一言一言によって、面接がググっと進展し、クライエントの洞察が見事に深まっていったのです。
その切れのある応答に、私は本当に衝撃を覚えたものです。
その面接は、おそらく100回以上繰り返し聞いて(読んで)研究しました。
基本的には傾聴と共感、そして要所要所での投げかけ(問いかけ)だけでした。
そこには「役に立つことをいわなきゃ」といった動きは全くありませんでした。
吉田が放つ応答が、クライエントの自己洞察を見事に喚起していったのです。
私のカウンセリングは、この吉田の面接の影響をたぶんに受けています。
傾聴とはいかなるものか?
共感的理解とは、本来はどんなものか?
そうしたあるべき姿を具現化した面接だったのです。
役に立つこと、まともなことを言わなきゃ・・・なんて思う必要はありません。
役に立つことを言うことが、クライエントにとって役に立つかどうかは、また別です。
カウンセリングの本筋は何か?
カウンセラーが出来ることは何か?
私のその原点を突き付けたのが、吉田哲の面接だったのです。
共感的理解とは何か
カウンセリングや傾聴の勉強をすると、必ず「共感的理解」について学ぶと思います。
ところがこの「共感的理解」というのが、なかなかピンと来る人が少ない。
そこで、今回は改めて共感的理解について、その難しさと秘訣をお話します。
例えばあなたは共感的理解について、こんな説明を聞いたことはないですか?
「あたかもクライエントが感じるように感じる・・です」
残念ながら、これでは学習者は現場で実践する術が見つけられないのです。
まあ、教える側もわかっていないから、こうした言葉の遊びでお茶を濁すのですが・・・
では、私たちが相手に本当の意味で共感できた時、どのような感じになるのでしょうか?
この事について明確に説明できる人はいないようなので、以下に改めて説明します。
共感的理解と肯定的配慮
共感の感覚を言葉にすると「なるほど、そういうことか」「そういうことだったのか」と軽く膝を打つような感覚です。
これは静かではあるが、確かな感覚ともいえます。
私たちは本当に共感出来た時、間違いないという確信に近いものを感じます。
そして、この感覚を得たとき、それは自然と自分の言葉で置き換えられるものです。
そう、これが適切な応答になっていくプロセスです。
だから、真の共感的理解を得た実感がなければ、的を射た応答はできないことになります。
そして、この「なるほど、そういうことか」という感覚を得ると、私たちは相手にある種の親近感を覚えます。
相手のことをある部分で理解できた時、聞き手は相手(話し手)に親近感を覚えるものなんです。
カウンセリングでいえば、カウンセラーがクライエントに対して抱くものですね。
これをロジャーズは肯定的配慮といっています。
そしてロジャーズの興味深いところは、この肯定的配慮は共感を得る前にも持つ必要があると唱えたところです。
そもそも、共感できれば誰もが肯定的に相手を捉えられるようになります。
そうではなく、理解できない状態でも、先に肯定的に捉えることで真の共感に至る。
ロジャーズはこう説いたのです。
これが共感的理解の感覚だった
肯定的に捉えるというのは、私の言葉でいえば「知りたい、わかりたい」という関心の向け方です。
相手の話を、相手のことをもっと知りたい、わかりたい。
カウンセラーはクライエントに対して、こうした興味・関心の向け方を意識します。
そうすることでより正確に「クライエント理解」がもてますし、そこから共感的理解にもつながりやすいのです。
そしてクライエントの訴えを「もっと知りたい、わかりたい」「それで、その先は・・」という具合に聞き続ける。
これが傾聴の姿勢と目的です。
その結果「なるほど、そういうことだったのですね」という理解を得る。
これが共感的理解の感覚です。
そこから「つまり、こういうことだったのですね」「こう理解しましたが、これで合っていますか?」と確認する。
その確認応答を聞いたクライエントが「はい、まさにおっしゃる通りなんです」と反応する。
ここまで来て初めて共感的理解が成立したといえます。
この共感的理解の成立があるから、クライエントはさらに次の話をしようという動機付けを得て、話を続けます。
このサイクルが繰り返されることで、カウンセリングは進展や深まりを見せます。
ここまで、おわかり頂けたでしょうか?
だから、カウンセリングは対話の一つであり、人間関係の一つだといえるんです。
通常の会話や雑談も、このプロセスの繰り返しなわけですからね。
通常の会話との違いは、その繊細さ、深さ、話題の複雑さといったところでしょう。
共感的理解について、少しはおわかり頂けたでしょうか?
「あたかも・・」でピンとこなかった方も、少しは納得して頂けたでしょうか?
【動画】カール・ロジャーズの傾聴・共感的理解のコツ
最後に、カール・ロジャーズの説いた傾聴・共感的理解のコツについて短い動画で解説しました。
共感的理解ほどカウンセリング学習で誤解されているものはないので、ぜひご覧ください。
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