【傾聴技法】とカウンセリング(受容・共感・トレーニング)

傾聴技法については様々な誤解があります。

今回は傾聴技法に関する誤解を解き、正しい傾聴技法の理解とそのトレーニング方法などを、カウンセリング歴20年以上の現役心理カウンセラーがご紹介します。

カウンセリングの勉強で初心者から上級者まで必読です。


【筆者プロフィール】
心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。コーチとしても様々な目標達成に携わる。
著書「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」は台湾でも出版された。
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傾聴技法とは

傾聴技法とは何か。

先ず「技法」という言葉の意味ですが、辞書を引くと「技術上の方法、やり方」という意味でした。

つまり傾聴技法とは、傾聴の技術上の方法であり、傾聴のやり方という意味になります。

次に「傾聴」とは何かという問題。

いろいろな説明を読むと「ボヤー」っとした説明が多い。

つまり、実践経験から体得した人が説明していない。

そこで、カウンセリング歴20年以上(2024年9月時点)の現役心理カウンセラーが、傾聴を定義いたします。

傾聴とは「相手の話を正確に聞くこと、聞けること」です。

カウンセリングでいえば、カウンセラーがクライエントの話を正確に聞く、聞けるという意味です。

ですから傾聴出来るということは「相手の話を正確に聞ける」という意味になります。

傾聴力の意味は「相手の話を正確に聞く力」となります。

傾聴トレーニングは「相手の話を正確に聞くためのトレーニング」となります。

こうした定義づけを行えば、全て「相手の話を正確に聞く、聞ける」からデザインする必要があることがわかります。

ですから傾聴出来ているかどうかのチェックポイントは「相手の話を正確に聞けているか、否か」の一点になります。

傾聴技法とは「相手の話を正確に聞く技術上の方法、やり方」ということになります。

なぜ傾聴が必要なのか

人と会話する際やカウンセリングでは、なぜ傾聴が必要なのでしょうか。

カウンセリングも日常の会話も、そもそもその目的は「意志の疎通」にあります。

意思の疎通というのは、互いの考えや伝えたいことを「共有」することです。

共有するために話し手は言葉を用いて伝えたいことを伝えようとします。

つまりこれが「話す」という行為の目的です。

ということは、聞き手はその話を聞くわけですから、聞く目的は「相手の伝えたいことは何か」になるわけです。

意思疎通(共有)を図る上で、この聞くという行為には「正確さ」が求められる所以です。

正確に聞けなければ、相手が伝えたいことも正確に共有できない。

逆に正確に聞ければ聞けるほど、相手が伝えたいことを正確に共有できるわけです。

だからこうした会話やカウンセリングにおいて、傾聴は絶対的に必要となります。

傾聴技法と肯定的配慮(積極的関心)

少しここからは、カウンセリングの話になります。

カウンセリングでは、クライエントの話を聞く際にカウンセラーに「肯定的配慮(積極的関心)」が必要とされています。

つまり否定的に聞かない、強い興味・関心を以って聞くということです。

なぜなら、相手の話を正確に聞くには、それ相応の集中力とエネルギーが要ります。

私たちが最も鋭い注意・集中が向けられる時、それはその注意を向ける対象に強い興味・関心がある場合です。

大好きなドラマや映画、危険を感じる事柄などに対して、私たちは強い興味・関心を起こします。

だから、クライエントの話にカウンセラーは強い興味・関心を持ち続ける。

誤解を恐れずにいうと、カウンセラーはクライエントの話を「興味深々」に聴く必要があるのです。

傾聴技法と受容

受容というのはわかりやすくいうと「受け容れる」ということです。

「受け容れる」という言葉の意味は、これもわかりやすくいうと「認める」です。

カウンセラーはクライエントの話だけでなく、クライエントを一人の人間として認める。

クライエントを全体的に受容することが求められます。

これも「否定」と対照的な意味合いとなります。

傾聴技法において、この「受け容れる」「受け容れながら聞く」ということが重要になります。

なぜなら、否定的・拒否的な聞き方では「相手の話を正確に聞く」ことが充分にできなくなるからです。

クライエントの話を正確に聞けなければ、クライエントに対する理解も生まれません。

傾聴技法と共感的理解

クライエントに対する理解についてもふれなければなりませんね。

クライエントに対してカウンセラーは客観的理解と共感的理解、この両方が必要になります。

クライエントが伝えたいことやクライエント自身を正確に理解しなければならないためです。

共感的理解は情緒的、感覚的な理解でもあり、クライエントの主観の世界をクライエントと共有することです。

カウンセラーの中に共感的理解が起こると「なるほど、そういうことか」といった静かではあるが確かな感覚が生起します。

カウンセラーはこの感覚を頼りにカウンセリングを進めていくことになるのです。

あいづち、うなずき、繰り返しは傾聴ではない

コーチングでもよく言われるのですが、傾聴とは相づち、頷き、繰り返しだというものです。

しかし、傾聴は決して相づち、頷き、繰り返しなどではありません。

それらはあくまでも聞く態度の一つに過ぎません。

相づちや頷きはともかく、繰り返しを乱用することは信用を落とすだけなので、ぜひやめましょう。

あくまでも傾聴とは「相手の話を正確に聞く」ことです。

相づちと頷きというのは、そこまでの相手の話をどう理解できているかという聞き手の反応です。

ですから、聞き手のあいづちとうなずきを確認すれば、その聞き手の理解度、実力までわかってしまいます。

傾聴力のあるカウンセラーのあいづちや頷きは、一味も二味も違います。

傾聴力とは

傾聴力とは、相手の話を正確に聞く力、聞ける力のことです。

傾聴力があるということは、この正確に聞く力力あるということです。

ちなみに聞き上手というのは、本当は何が上手な人なのでしょうか。

それは「正確に聞くのが上手」な人のことなんです。

この正確に聞く力=傾聴力は、カウンセリングにおいて必須の力といえます。

傾聴技法習得のトレーニング方法

傾聴技法を習得するためには、どのようなトレーニング方法が良いのでしょうか。

ここでも定義の確認をします。

傾聴とは「相手の話を正確に聞くこと」でした。

ということは「相手の話を正確に聞く力」をトレーニングするわけです。

そして相手の話が正確に聞けるようにすることが、トレーニングの目的となります。

ここまできて初めて、ではどのようなトレーニング方法が良いのかがわかります。

傾聴トレーニングの一環として、ロールプレイがあります。

話し手と聞き手が1対1で話を交わす練習です。

このロールプレイもやり方を間違えると効果はゼロになります。

先ず、作り話はNGです。

それでは何も検討できません。

リアルな話をしてもらいます(リアルであれば悩みだけでなくあらゆる話が可能)

その時、絶対必要な事。

それは「録音(録画)」です。

つまり、実際のやり取りを記録に残すのです。

ロールプレイが終わったら、その録音を細かく聴き返していきます。

そして「一言半句」のレベルでチェックしていきます。

聞き手は話を正確に聞けていたのか。

聞き手の理解は的確か。

聞き手の受け答え(応答)は適切かといったことをチェックします。

録音もせずに互いの記憶、もしくは周りで聴いているオブザーバーの記憶だけで、感想を言い合っていてもトレーニング効果は極めて薄いです。

記憶ではなく記録を元にトレーニングを行いましょう。

傾聴技法の秘訣

傾聴技法の秘訣は、言葉にすると簡単です。

相手と相手の話への強い興味・関心を維持し、興味津々で話を聞き続ける事です。

そしてポイントは「相手の一番言いたいこと、伝えたいことは何か」の、この一点に集中することです。

私は20年以上様々なカウンセリングをしてきましたが、現在もこの一点に対して自分がどれだけ出来ているかを気にします。

なぜなら、人間は何かに集中しようとしても、どうしてもそれが出来ない時が多いからです。

それはカウンセリングにおいても同じ。

いえ、むしろカウンセリングだからこそ、いろいろなことが気になってしまいがちなのです。

例えば「相手は自分をどう思っているだろう」「次、なんて言葉を返せばいいんだろう」「自分が返した言葉が間違っていたらどうしよう」「沈黙が起きたらどうしよう」

これら全て、相手の話を正確に聞くこととは直接関係のないことです。

しかしこうした「聞くことを邪魔する要素」が聞き手の中には次から次へと発生してしまうのが常です。

正確に聞くには、こうした要素の邪魔されない集中力が必要。

そのための唯一の秘訣が「相手の一番言いたいこと、伝えたいことは何か」を、興味津々で聞き続けることであり、その集中力を維持することなんです。

傾聴トレーニングは、そのためにやっていくようなものです。

傾聴技法とカウンセリング

カウンセリングにおける傾聴技法は、全ての入り口となります。

正確に聞けることでクライエントに対する深い理解が生まれ、その理解したことがクライエントにも伝わります。

そこから信頼関係(ラポール)が築かれ、様々な共同作業ができるようになる。

洞察、考察、自省、振り返り、捉えなおし、新たな選択、そしてクライエントの人間的成長とカウンセリングの卒業。

正確に聞くことが出来なければ、これら全てが始まらないといってもいいでしょう。

傾聴技法のまとめ

傾聴技法は相手の話を正確に聞くための技術的方法、やり方です。

それはコミュニケーション(意思疎通)の最大の目的である「共有」を円滑に達成するための重要な必須手段。

傾聴を実践するには、話し手に対する強い興味・関心から生まれる集中力がカギ。

日常会話よりも高いクオリティーを必要とするカウンセラーにおいては、人並み以上のトレーニングが必要になるわけです。

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心理カウンセラー・臨床カウンセラー養成塾 塾長 鈴木雅幸(コーチ・企業研修講師)のプロフィール

台湾でも出版された「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」の著者で、心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。
コーチとしても様々な目標達成に携わる。
 詳しいプロフィールはこちら

著書「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」