不登校になったり引きこもりになった人たちは、人間関係に絶望してしまった人たちです。
引きこもりに陥った多く人たちが、その前段階として不登校を経験しています。
そして、何らかの出来事や長期的な環境要因によって、人間関係の中で深く傷ついたり、長期間傷つき続けることによって、人間関係のある場所にいられなくなってしまったのです。
社会や人間関係は、そうした挫折経験をした彼らからすると、自分を攻撃する絶望的な場所としか捉えられなくなってしまっているのです。
不登校、引きこもりについて、以下にわかりやすく考察いたします。
もくじ
引きこもりは人間関係への絶望
今、私はカウンセリングのあり方やスキルに人生の未来がかかっていると真剣に捉えています。
なぜならば、現代の社会問題の多くが「人間関係の希薄さ」が原因だと思うからです。
例えば不登校や引きこもりも、他人との関係を築けないことで起こります。
もちろん、不登校の背景(原因)には、様々な問題があります。
しかし、そうした問題の結果、人間関係が他者と結べなくなった。
それが不登校にまで追い込まれる原因の一つになっています。
引きこもりは人間関係に絶望したことによって起こります。
人と関わることが様々な問題や経験によってできなくなった。
そのために社会に居場所が感じられず、社会との関係を断ってしまっています。
絶望が怒りに変り、人を傷つける
その結果、中にはそうした絶望感が募り、憤りを覚えるようになる人間もいます。
鬱積した怒りがやがてその人間を反社会的な行動に駆り立てる。
痛ましい事件まで引き起こすのは、そうした怒りを社会にぶつけているからです。
もちろん、こうした事件や行為は絶対に許されないことです。
しかし、こうした事件が起きないようにするためには、あの行動の背景や心理的要因を知る必要はあります。
一人の人間が追い込まれるまで、満足に周囲のサポートを得られなかった。
なぜそのようなことが起きるのか?
それは当人や家族が抱え込んでしまう場合。
あるいはサポートする側の関わり方が不適切な場合。
原因はいろいろ考えられますが、ここにも人間関係の希薄さが壁になります。
いじめ問題の背景に人間関係の希薄さがある
近年のいじめは、学校が解決できない事例が頻出しています。
その問題の本質にはやはり「人間関係の希薄さ」があります。
学級崩壊にしても、クラスの人間関係の希薄さがあげられます。
教室の子どもたちの人間関係が希薄なので、何か問題が起これば、あっという間に深刻な事態に陥るのです。
また、先生と子どもたちとの人間関係も希薄になっています。
そのため、先生たちも子どもたちの問題を解決することが出来なくなってしまいました。
大人社会にも顕著な人間関係の希薄さ
そして今、この希薄さが家庭にも起きています。
家族間の人間関係もドンドン希薄になっています。
家族の問題の多くが、この関係性の希薄さに起因しています。
では、人間関係が希薄というのはどういうことでしょうか?
一言でいうとそれは「わかち合えているものが少ない」関係性をいいます。
感情、考え、経験、価値観など、お互いにわかち合えているものが少ないのです。
それは別の言葉でいうと「理解しあえていない」ということです。
そしてわかち合えているものが多く、理解しあえているということは、つまりは互いが「信頼関係にある」ということです。
不登校・引きこもりの背景にあるもの
この信頼関係というものは、実は、互いの人間性を成長させるものでもあります。
誰かと信頼しあえているという実感が、人を成長させます。
人間、生まれてきた時に、多くの人は母親との間に信頼関係を築いていくことで自分に自信をもちます。
小さい頃から身近な人との信頼関係を経験することで、自分や他人を信じることができます。
つまりは、そうした経験から社会に自分の居場所を創造していけるのです。
ところが、こうした発達段階で関係形成につまずくと、自分や他人を信じられなくなっていきます。
人間関係そのものを嫌悪したり、信じなくなったりします。
これが不登校や引きこもりなどの引き金の一つです。
今は家庭でも学校でも、この関係形成が上手くいかない場合が多い。
そのために不登校、いじめ、学級崩壊が増え、社会でも引きこもりや職場の人間関係のもろさが際立ってきているのです。
ですから、社会で起きるほとんどの問題の根本に人間関係の希薄さが見え隠れしていると私は捉えています。
人間関係を取り戻すカウンセリング
ではなぜ、カウンセリングに社会の未来がかかっていると冒頭で書いたのか?
それは、カウンセリングとは「人間関係の形成そのもの」だからです。
お互い初めての間柄から「信頼関係」を築いていく経験そのものだからです。
だからカウンセリングのあり方とスキルは、今の社会に温かい命を吹き込むことができると考えているんです。
つまり、カウンセリングをただの援助や支援の方法とだけではなく、日常の、社会的な人間関係に活用されていくことを指しています。
家庭でも、学校でも、そして職場やコミュニティーでも、カウンセリングのあり方とスキルが活用されていくことです。
カウンセリングのスキルはわかち合いのスキルといってもいい。
カウンセラーとクライエントとの信頼関係の経験の場です。
クライエントは信頼関係を「経験する」からこそ、人間的な成長を起こし、立ち直っていくといえるわけです。
この「成長」こそが立ち直りの力になります。
そしてこの人間的成長は信頼関係の経験によって起こります。
閉ざされた心を開く血の通った働きかけ。
自暴自棄になっている心に平穏さを取り戻す穏やかな働きかけ。
つまりは成熟した関係性ですね。
それがカウンセリングのあり方とやり方なのです。
社会の一人一人がこのあり方とやり方を身につければ、自分の身近な人との信頼関係を築くことができます。
互いの人間的な成長こそ、現代の荒んだ社会を変える唯一の道筋だと思います。
傾聴や共感の反射神経を磨くことで、この道筋を確かなものにしていけます。
人生100年時代は孤独か?
令和の時代、いえ、人生100年の時代は、人との繋がりがますます重要になってきます。
一人世帯が増えることや、AIやスマホ、SNSの普及によって、一人で過ごす時間が増えていくからです。
生活様式は、時には急激に変わるものですが、人間のDNAはそう簡単には変わりません。
これまで人と繋がることで命を守るようにインプットされたDNAですから、一人で過ごす時間が長くなれば、それだけ孤独な感情が強くなります。
そうなった時に、私たちは自ら繋がりを求めたいという欲求を起こします。
その欲求を充分に満たすために必要なのがコミュニケーションです。
つまり、これからさらに求められる重要な能力はコミュニケーション能力になります。
人と心を通わすコミュニケーション能力を磨くことが、これからの時代に大きく求められるでしょう。
元々私たちは支え合いながら生きるように出来ています。
AIやスマホ、そしてSNSを上手に活用することで、私たちは支えあいを充実させることができます。
SNSの交流を自分の人生で有意義なものに出来るか?
それともトラブルの温床としてしまうのか?
そのカギを握るのは、コミュニケーション能力です。
孤独化の時代、SNS、ますます必要な傾聴(コミュニケーションスキル)
SNSでのコメントやメッセージへの一言をとっても、コミュニケーション能力の有無に差がでてきます。
コミュニケーション能力のある人は、こうした所でも手を抜きません。
簡潔に、それでいて丁寧な対応をします。
そして、相手の気持ちや考えなどを正確に把握した上で、それに合った適切な働きかけが上手にできるのです。
傾聴のスキルとは、こうしたコミュニケーション能力そのものです。
相手の伝えたい事を正確にインプットする。
相手の伝えたい事に対して、しっかりとした理解を持つ。
そして、相手にこちらの伝えたいことを適切に、簡潔に、配慮をもって伝えていく。
こうしたスキルや能力は、これからの時代を生きる上で非常に重要となってきます。
仕事をする上でも、コミュニティーに属する上でも、家族との生活でも、コミュニケーションの能力は必要です。
つまり、傾聴のスキルを身につけることで、人生のあらゆる場面を充実させることが出来るわけです。
これはSNSなどのコミュニケーションも同じです。
傾聴能力に欠かせない自分との対話
また、こうしたコミュニケーションには、常に自分自身との対話が必要です。
自分が今、どんな気持ちなのか?
どんな感情や思考がどのように起きているのか?
こうしたことをリアルタイムで認識出来ると、コミュニケーション能力は飛躍的な向上を見せます。
いずれにしても、傾聴のスキルを有することは、これからの時代を幸せに生きる上で非常に大切になってきます。
傾聴のスキルとはいわば他人と短時間に信頼関係を築くスキルです。
多くの人と様々な信頼関係を築けることは、孤独の時代を豊かにする上で重要です。
令和の時代は、間違いなく「一人世帯」が増えていきます。
高齢者の方、独身の方など、人口減少社会なのに世帯数は増えていく。
かつてない社会を先頭を切って経験する日本社会でこそ、コミュニケーション能力(傾聴スキル)が大きな力を発揮するはずです。
痛ましい事件の背景にある感情的な人たち
近年、非常に胸の痛む事件が続いています。
これらは、残忍な犯行であると同時に、実に短絡的、感情的(衝動的)な犯行です。
また、ネット上などでは、何か話題に対して、すぐに誹謗中傷や無責任な批判コメントで炎上が起こることも増えました。
こうした背景にあるのは、以前よりも私たちが「感情的になりやすくなった」ということが挙げられると思います。
感情的になったという事は、別の表現をすると「反応的になった」とも言えます。
何かを経験したときに、すぐ感情的になったり、すぐ反応的な態度になってしまう。
具体的にはすぐに落ち込む、すぐに怒り出す(キレる)、すぐに自分の意見や価値観を押し付ける。
つまり、目の前の状況をしっかりと捉えられなくなってきたのです。
または、相手の話をしっかりと聞くことができなくなってしまったのです。
要はきちんとコミニケーションを取るということができなくなってきている。
人間関係が希薄になってきているわけです。
自分以外の人間への関心が希薄に
相手の話をしっかりと聞くことができないというのは、目の前の相手に対して人間的な関心が希薄になったともいえます。
目の前のこの人はどんな人なのだろう?
どういう人柄で、どういう人生を歩んできたのだろう?
今、物事をどう捉えているのだろう?
自分自身のことやこちらのことをどのように捉えているのだろう?
今、どんな気持ちで、何を考え、どんなことを望み、どんなことを避けたいと思っているのだろう?
こうした相手への関心が薄くなってきているのです。
以前にも増して人への関心興味が希薄になってきている。
そのことが人間関係の希薄さにつながり、それがコミニケーションの希薄さにつながっている。
結果として感情的、反応的な態度にしかならなくなってきているともいえます。
現代社会で精神的な余裕を失った私たち
ではなぜ目の前の相手に対して、人間としての関心の持ち方が希薄になってきてしまったのでしょう?
1つには私たち自身の精神的な余裕のなさが起因しているかもしれません。
日々の生活でいっぱいいっぱいになっている。
目の前に山積した問題解決に日々追われている。
そのために、それ以外の事に目を配ったり、関心を寄せるという余裕がない。
本当は1番大切な人とのコミュニケーションや、人間関係を築くということ。
そこにまでエネルギー注げなくなっている。
そのために、相手への関心が薄れ、人間関係も希薄になり、その結果として感情的、反応的な態度しか取れなくなってきている。
こうした悪循環が今、社会生活を送る私たちの中で起きています。
傾聴で大切なのは人への関心
先日久しぶりに傾聴スキルセミナーを開催しました。
参加された方々は皆、一様に自分以外の人間に対する興味や関心がある人たちでした。
人への興味・関心を持ちながら、そこでぶつかった問いに対する答えを探す。
そのためにセミナーに参加されていたようです。
カウンセラーの方や、カウンセラーを目指す方もいらっしゃいました。
相手の話を聞くと言うことに興味がある。
それは、自分の周囲にいる人たちに対して何らかの興味や関心を持っているということです。
だからこそ、目の前の人間の話をしっかりと聞きたい。
目の前の人間としっかりとコンタクトを取れるようになりたい。
目の前の人間と心を通わせるということを大切にしたくなるわけです。
そこで、相手の話をしっかりと聞くということを通して、目の前の人間に対してしっかりと関心を寄せていくということも学びます。
傾聴の学びを通して、私たちは目の前の相手といかにしっかりと心を通わせるかということを学んでいくのです。
傾聴の学習とは、単に聞き方のテクニックを知ることではありません。
相手の感情を操作するといった浅はかな学びでもないのです。
相手と心を通わすることによって得られる充実感や充足感。
こうした経験を積み上げていくことの喜びを知るということも学びの1つです。
カウンセリングや傾聴を学ぶとは、単に心理学の理論や知識を詰め込み、相手の心を動かすテクニックを知ることではありません。
カウンセリングや傾聴の学びは、人間を知るということです。
そして心通わす喜びを知る事でもあり、人生や生きると言うことを深く学ぶことでもあります。
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