傾聴力とカウンセリング


カウンセリングに必要とされる傾聴力とは何か?
実は集中力と注意の向け方、そして反射神経なんです。
つまり、クライエントの話をどれだけ集中して聞けるか
どこまで長く、そして深く集中できるか。
クライエントの話を聞いている時に、その話のどこに注意を向けるか
そして、クライエントの話を聞いていく中でカウンセラーがどのような内的反応を起こせるか
これが傾聴力を決める要素です。
ところが、こうしたことを指摘し、教え、トレーニングができる場がありません。
そのため、多くのカウンセラーや援助者、学習者が迷路にはまっているのが実情です。
決して相手の言葉を繰り返したり「辛いね」「大変ね」という上滑りな言葉を返すことではないんですね。
迷路にはまっている多くの皆さんにわかりやすく解説します。

傾聴には反射神経が必要

養成塾では「傾聴には反射神経が必要だ」とお伝えしています。
クライエントの話を瞬時に的確に理解し、パッと適切な応答で応じる反射神経です。
そして、その反射神経が十分に働く精神状態も。
この精神状態はどうすれば創り出せるのか?

答えは「集中力」なんですね。

つまりクライエントの話に集中するんです。
クライエントに対して自分の神経を全て向けるんです。

余計なことを一瞬たりとも考えず、クライエントの話に全ての神経を集中させる。

スポーツに例えると、とてもわかりやすいんです。
先日、テニスの2018年全米オープンで、日本の大坂なおみ選手が優勝しました。
彼女は決勝戦の相手のセリーナ選手が感情的になって騒然とした会場の中で、一人集中力を切らさず、感情的になりませんでした。
その結果、高度なパフォーマンスを発揮し、彼女が望む最高の結果を手に入れました。
カギは集中を切らさなかったことであり、集中力を持続したことだったといえるでしょう。
深く鋭い集中を維持することで、私たちは高いパフォーマンスを発揮できます。
スポーツもそうですが仕事もそう。
傾聴も例外ではないんですね。

誰も指摘しないですが、傾聴のカギを握るのは集中力の深さと長さです。

傾聴のカギは「ゾーン」「フロー」という状態

クライエントに対する深く鋭い集中力を生み、それを面接の間、維持する。
それが正確な傾聴と深い共感を生み出します。
つまり、カウンセラーの「精神状態」がカウンセリング成功のカギを握るわけです。
別な言葉ではこの集中状態を「ゾーン」と呼んだり、「フロー」と呼んだりもします。
こうした精神状態にもっていくという意味では、カウンセリングの直前に座禅を行うのは有効です。
私自身も面接前に禅を組むと、面接の初めから深い集中状態で臨めます。
いずれにしても、こうした「状態」を創り出し、維持すること。
これが傾聴には欠かせないといえます。
では、次に傾聴力に関する具体的な実践法をお伝えします。

傾聴とは話を正確に聞くこと、聞けること

傾聴における集中状態を創り出すために、クライエントの話を「一言半句正確に聞く」という姿勢と実践が必要です。

傾聴=クライエントの話を正確に聞くこと、聞けること。
※正確に=クライエントの話を一言半句漏らさず、違わず

深い共感を実感するにも、適切は応答を導きだすにも、この「一言半句正確に聞ける」集中状態が、先ず必要になります。
重要なことというのは、こうして説明すると概して簡単な説明になります。
「要は、集中できればいいんでしょ?」って話ですから(笑)

「知っている」と「できる」の溝を埋めるのがトレーニングと経験値

しかし、知ったからといってすぐに出来るわけでは、もちろんありません。
出来ないんですよ、これがなかなか・・・・
だから出来るようになるまで試行錯誤を続けるしかない。
出来るようになるには「出来るようになるまで続ける」しかありません。
そのために応答の問題演習があり、ロールプレイがあり、教育分析があり、逐語検討があるんです。
でも逆にいうと、これを延々と繰り返せば繰り返すほど、聞けるようになり、共感能力も応答能力も磨かれていく。
うん、説明するとやっぱりシンプルになりますね。
シンプルなことをどれだけ続けられるか?
単純なことをどれほど淡々と繰り返していけるか?
正しい方法をいかにブレずに貫いていけるか?

スポーツも仕事も、そして傾聴の反射神経も、大切なことは同じなんですね。

これが傾聴の反射神経です

傾聴の「反射神経」って何?
私はよく、この「反射神経」という言葉を使います。
ここで使う「反射神経」は、以下の意味で使用しています。
「無意識に(反射的に)起こる反応」
つまり、考えたり意識しなくても、自然に起こる反応のことです。
傾聴の反射神経とは、話を聞きながら「無意識に(反射的に)起こる」内的な反応のこと。
いちいち考えたり意識しなくても、適切な応答が浮かぶし、的確な理解が起こる。
そのことを「傾聴の反射神経」と言っています。

カウンセラーの応答がカウンセリングの流れを左右する

カウンセラーは相手の話を聞いたら、即座に何らかの反応を返します。
それはあいづちだったり、うなずきだったり、言葉だったりします。
その態度の一つひとつが、次のクライエントの反応を促すもの。
しかも、カウンセリングが適切な流れになるような反応かどうか?
それがカウンセラーの応答の適切さだといえます。
つまり、カウンセラーのあいづち一つ、うなずき一つ、言葉一つがクライエントに十分に満足されるものであること。
その満足がクライエント自身の洞察を深めたり、気持ちの整理をつけたりするもの。
そういう流れを滞らせずに促進させる応答が、カウンセラーには必要になります。
私が「カウンセラーのたった一言がカウンセリングの流れを変える」という所以です。

適切な応答は無意識に起こる反応?

その応答の導き出し方のポイントが「反射神経」にあります。
カウンセラーは特に考えたり意識したりせずに、無意識に(自然に)反応(応答)する。
そういう反応(応答)が出来るようになることが必要です。
しかもそれは正確に聞けて、的確に理解できた上での話です。
かつて、私の師であった吉田哲は、応答に関してこう言っていました。
「応答しているときは、何も考えていない」
「勝手に言葉が浮かんでくるが、それがだいたい適切なものだった」
私もはじめは、その師匠の言葉を実感として理解することは出来ませんでした。
しかし、ある時からその言葉を実感として理解できるようになりました。
クライエントに深く集中し、鋭く注意を向け続けていると、そういう感覚が出てくるのです。

傾聴習得には繰り返しと継続による経験値が必要

物事なんでもそうですが、上達する際には、皆同じステップを踏みます。
先ず、最初は一生懸命意識してやっても、なかなか上手くできません。
それでも続けて努力していると、意識すると少しできるようになってきます。
さらに努力を続けると、意識するとかなりの確率で出来るようになっていきます。
もっと努力していくと、そのうち意識しなくても上手くできるようになります。
スポーツ技術の習得でも、仕事のスキルアップでも、全て同じです。
最初はどうやっても出来なかったことが、最終的には鼻歌交じりでも勝手にできる。
これが上達(レベルアップ)の階段の上がり方ですね。
傾聴や共感、そして応答も例外ではありません。
このステップを上がっていくことで、最終的には無意識に出来るようになる。
自然な反応としてできるようになっていきます。
自然に最適な理解が生まれ、自然に最適な応答が浮かびます。
クライエントの話を聞いていると、勝手に(自然に)理解と言葉が浮かびます。
その言葉を口にする(応答する)と、クライエントの反応はだいたい良好です。
「そう、その通りです。それで・・・」という具合に、話が進んだり、深まったりします。

一瞬の反射神経の働きも、実は分解して説明できる

この反射神経を、どうしたらカウンセリングを学んでいる人たちに解説できるか?
どうすれば傾聴を勉強する人たちの反射神経を磨くことができるか?
それを今まで試行錯誤し、その指導法を随時バージョンアップしてきました。
そして、反射神経は分解して説明できるし、分解して練習することで、磨くこと(レベルアップ)が可能なのだとわかりました。

傾聴力は話を聞いている時に働く自分自身の反射神経を分解して理解する。
次に適切な神経の働かせ方を学び、自分の神経の動きを修正し、それを取り入れることで磨かれる。

かつて師が伝えようとしていた感覚を、私なりに言語化し、分解し、わかりやすくお伝えできるようになりました。
そしてその概念を具体的な指導プログラムに置き換えて、それを受けた人の成果(上達)も出せるようになりました。
クライエントとの対話に臨むには、理論や小手先のテクニックは通用しません。
生身の人間同士の血の通った対話には、常に反射神経が求められます。
それは「心ある反射神経」とか「あたたかい反射神経」などといえます。
そしてこれらは訓練と経験値で獲得できるものです。

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