訪問看護と傾聴

統合失調症の訪問看護と逐語検討

ここ数ヶ月の話なのですが、ある看護師(以降、Nさん)の逐語検討を続けています。

統合失調症の引きこもりの患者さん。

そのご自宅に在宅訪問をされている看護師のNさん。

訪問している短い時間の中で、患者さんと会話を交わすわけですが、その一言一言をチェックしたいということで、私のスーパーバイズを受けています。

患者さんの許可をもらい、会話を録音し、 その録音記録を文字に起こして逐語を作成しています。

逐語というのは、作るのが大変なんです。

1時間ぐらいの会話の逐語を作るのに、少なくとも8時間くらいはかかるものです。

Nさんは家事をこなし、子育てもし、訪問看護の仕事の合間を縫って、逐語を作成しているのです。

私も今回、統合失調症の方の逐語記録をここまで綿密に検討するのは初めてでした。

Nさんのおかげで、私自身も大変貴重な機会を得ました。

患者さんは過去に措置入院による身体拘束を経験していて、病院や医療に対しての不信感がとても強い方です。

しかしながら、訪問看護師の中でも、このNさんに対しては唯一、心を開いているのです。

元々のNさんのお人柄もあるのですが、逐語記録の検討により、Nさんの対応に変化が出てきたことも、心を開く要因の一つであったでしょう。

1回の逐語記録の長さは、時間にして1時間ほど。

その1時間ほどの逐語記録の検討に10時間近くかけています。

厳密に検討しようとすれば、 そのくらいの時間は必要になるわけです。

その甲斐あってか、先日Nさんより報告のメールをいただきました。

過去の経験から、病院や医療に対して強い不信感を持っていたその患者さんから、Nさんの訪問看護とその時のやり取りが、自分の支えのひとつになっていると言われたそうです。

何もできない自分に無力感と虚しさを感じる日々だ。

そんな日々の中に、訪問看護があるということが、自分の楽しみでもあり、支えでもある。

そして、ベテランも含め何人かの看護師の中で、Nさんが一番話しやすいと、改めて打ち明けられたそうです。

ひたむきに取り組む看護師Nさん

Nさんにしてみれば、 自分はまだまだだから、もっともっとカウンセリングの勉強を続け、精進していきたいと言う言葉で、その報告のメールを締めていました。

一生懸命勉強している人ほど、出てくる言葉は謙虚になるものです。

しっかりと向き合おうとする人間ほど、その難しさがよくよく身にしみているのです。

かつて、河合隼雄という人が、 こんなことを書き残していました。

「臨床の仕事は難しく、常に初心に帰らなければならないところがあります。

私自身、自分はこの仕事をやっていけないのではないか、 自分はもう駄目なんじゃないかと思わされることが今でもあります。

しかし、自分はダメなんじゃないかと思わなくなった時が、本当にダメになった時なのです」

私の逐語検討やトレーニングでは、社交辞令やお世辞は一切使いません。

受講されている方には、事実をそのまま指摘します。

そのため、トレーニングを受ける方は「 自分はダメなんじゃないか」という思いに何度もなるかもしれません。

看護師である Nさんも例外ではなく、自分の無力さ、 至らなさを逐語検討によって何度も突きつけられてきたことでしょう。

それでもNさんは、逐語記録の提出を止めません。

忙しい時間の合間を縫って、時には対面で、時には Skype などを使って私の指導を受けています。

行動できない人は、できない言い訳を並べます。

しかし、行動する人は黙って取り組み続けるものです。

本当に多忙なはずの N さんですが、彼女が忙しいと言っているのを聞いたことがありません。

忙しいはずなんです、とっても。

しかし N さんの口から「時間がない」とか「忙しい」とか、できない理由を聞いたことがないんです。

何か事情や障壁があるのなら「ではどうすればできるのか」という想像力を働かせることです。

厳しい言い方になりますが、言い訳をする人はこうした「想像力」が働かないようです。

私の所には、逐語記録を提出したり個別のレッスンに通う人たちが、他にもいらっしゃいます。

彼らも同様で、できない言い訳を口にする代わりに、どうすればできるかをずっと試行錯誤しています。

そんな彼らを前に、私もついつい力が入ることもあります。

今、できることをやる

人生の中で何かに全力に取り組むという経験は、自分の人間性に厚みを与える貴重なものになります。

力を尽くした経験は、さらなる力を自分に与えてくれるいわば財産のようなものです。

カウンセリングを全力で学ぶ経験を通して得られるものは、スキルアップにとどまりません。

人間としての器を大きくするための経験にも通じるのです。

ちなみに、統合失調症はカウンセリングでよくなる病気ではありません。

しかし、それでも訪問看護を続ける N さん、そしてその訪問看護を心待ちにする患者さん。

彼らにとってこの経験は病気が良くなるかならないかとは別の生きた経験になる可能性を秘めています。

その患者さんは医療への不信感から服薬も拒絶しています。

必要な薬を飲んでくれないわけです。

統合失調症という病気にとっては、もちろん良いことではありません。

だからといって無理に薬を飲むことを勧めれば、 N さんに対する信頼感は一瞬にしてなくなってしまうでしょう。

タイミングを見て上手に薬を勧めるのか、 それとも血の通った対話を通して実感できる信頼関係が患者さんの心を服薬へと動かすのか。

今後も困難の連続となるケースです。

しかしN さんは既に

「自分にできることをひとつひとつしっかりとやっていこう」

という決意を秘めているようです。

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