話を聞くということは誰もが日常生活の中で行っていることです。
時には相手の話をしっかり聞こうという意識で話を聞くこともあるでしょう。
ところが、では相手の話を本当にしっかりと聞けるかというと、なかなかどうはいきません。
聞き手は「しっかり聞いた」「しっかり聞けた」と思っていても、話し手は「しっかりなど聞いてもらっていない」「しっかり聞いてもらった感じがしない」という風に、両者の間に起きな隔たりが生じることも珍しくありません。
そもそも、しっかりと話を聞けるようになるためには、しっかりと話を聞けるということがどういうことなのかを知る必要があります。
その上で、ではどうすれば話をしっかりと聞けるようになるのかということを理解すれば良いのです。
今回はそこのところを解説いたします。
もくじ
なぜカール・R・ロジャーズは来談者中心療法を確立したのか
「どうすることも出来ず、ただ話を聞くしかなくなった」
これはカウンセリングの創始者、カール・R・ロジャーズが自身の著書の中で書いた体験です。
ロジャーズも初めから傾聴や共感を主としてはいなかったのです。
初めはアドバイスや説得、分析などを中心とした対応をしていたそうです。
今でこそアドバイスや質問、説得や分析などをしない「来談者中心療法」や「パーソンセンタードアプローチ」の創始者として名を残したロジャーズ。
しかし、当初は全くその逆で、ガンガンにアドバイスなどをしていたようです。
しかし、そんなロジャーズにも転機が訪れます。
どんなアドバイスをしても、どんな説得を試みても、クライエントの心が動かない。
あの手この手で迫っても、最後にはこう言われてしまう。
「先生の仰ることはよくわかります。でも、それが出来ないから苦しいのです」
そんなことの繰り返しに、やがてロジャーズは行き詰まります。
そして最後にはもう、ただただクライエントの話を聞くことしか出来なかった。
聞くしかなく、途方にくれたのだそうです。
ところが、そうやってひたすら聞いていたら、クライエントが良くなっていったというのです。
アドバイスなどの積極的な働きかけをせず、ただひたすら話を聞き続けた。
そうしたら一つ、また一つと成果が上がるようになったそうです。
そこで、ロジャーズは気がつきます。
これは、もしかしたら「聞く」ということに活路が見出せるかもしれない・・・
これが傾聴によるセラピーの始まりであったと言ってもいいでしょう。
そこからロジャーズは、当時は高額であった録音機材を購入し、面接の録音と逐語研究を開始します。
そこで共感的理解や様々な対応を編み出しました。
友田不二男は逐語検討によるトレーニングの重要性を日本で啓もうした
戦後すぐに、このロジャーズのカウンセリングの理論と実践に開眼した日本人の臨床家がいました。
友田不二男といい、私の師である吉田悟の師匠でした。
友田氏も、当時茨城キリスト教大学の創始者の一人、ローガン・ファックス氏より、ある一冊の書物を渡されます。
友田氏も教育相談に携わる中で、その対応に限界を感じ、半ば絶望の中にあったそうです。
その最中にロジャーズの著書に出会い、目から鱗が落ちたのです。
そして友田氏もその後2年間、面接の録音と逐語研究に明け暮れ、その成果を著書にします。
録音と逐語検討による面接研究。
今はすっかり廃れてしまったこの取り組みも、昭和30年から40年頃には、全国の臨場家や教師たちが競って取り組んでいました。
この頃の研究成果の数々は、現在では貴重なものとなっています。
私は師からカウンセリングを学ぶ中で、当時の資料にも触れながらトレーニングを続けていました。
そして、その実践は今の教育界や社会の様々な問題解決の大きな一助になると確信しています。
傾聴学習は記憶ではなく記録を詳細に検討すべし
私は週末に都内で「傾聴レッスン」という名前のトレーニング講座を実施しています。
今回は14人の受講者と共に、講義とロープレの徹底検討を行いました。
たった一つの応答を皆で一時間かけて考えたり、質疑応答を活発に行ったりと、学びの深掘りができた4時間だったと思います。
これはカウンセリングに限った話では無いのですが、私たちは言葉を通して意思の疎通を行っています。
言葉を頼りにお互いのコミニケーションを図っているということです。
つまり、言葉が頼り、言葉が重要、言葉を手がかりに…ということになります。
ですから、意思の疎通を図る場合には相手の言葉を絶対的なよりどころとするというのが大きなポイントになります。
カウンセリングで言えば、私の師匠曰く「クライエントの言動を絶対視すること」と言う表現になります。
そこから一言半句漏らさず違わず正確に聞くこと、これが傾聴であるといえるわけです。
傾聴やカウンセリングで多くの人がつまずくのがこの言葉の部分です。
相手の言葉をどう聞き、どう解釈すれば良いのか?
その言葉を受けて、聞き手はどのような言葉で応じれば良いのか?
場合によっては、これが皆目わからないという壁にぶつかる人も少なくありません。
つまり傾聴やカウンセリングの学習で絶対に避けて通れないものは言葉をどう受け取るかであり、どんな言葉を投げ返すかということになります。
ところが日本のカウンセリング学習はおしなべてこの部分が非常に貧弱です。
言葉を重視しているというには、あまりにも浅く大雑把で学習者が壁にぶつかるのはそのためです。
そしてどうなるかというと、さらなる新しい理論や手法に逃げ道を作ることになるのです。
新しい理論や手法を学び、自分のものとすることを否定しているのではないのです。
「言葉を最重視する学習と対応」を学ばずして、新しい理論や手法に飛びついてもそこに答えはないということが言いたいのです。
そのため、養成塾では一つの応答の解析や検討に1時間以上かけます。
15分の会話のやりとりに2~3時間の時間をかけて解析を行ったりするわけです。
1回50分の面接になると、正直、じっくり検討するには、ケースによっては丸一日以上の時間が必要になります。
しかしそれは何も驚くべきことではありません。
一つ一つの言葉をしっかりと精査していくという作業を行えば、そのぐらいの時間はどうしてもかかってしまうということなのです。
しかしながら、そうした学習を粘り強く繰り返す。
継続して積み重ねていくことによって、着実な実力の向上が見えてきます。
現に、私のところで逐語検討を続けている塾生は、目に見えた実力の向上を経験しているのです。
自分のやり取りの逐語を検討する人としない人。
この違いは皮肉なほど顕著です。
正直、養成塾のセミナーをいくら受けても、自分の記録に向き合わないと進歩はありません。
傾聴や共感について、理論や考え方、そしてあり方。
こうしたことを「知識として知っておきたい」ということなら話は別です。
養成塾のセミナーだけでも、その目的は果たせるかもしれません。
しかし、実際に自分自身のスキルの向上を望むのであれば、限界があります。
やはり、自らの会話のやり取りを記録化し、その記録の検討を出発点とする。
この学習があれば向上は目に見えてくるし、上達の実感も確かに感じられます。
カウンセリングが上達する練習方法
カウンセリングや傾聴に限らず、仕事でもスポーツでも同じです。
ただいろいろな本を読んでも、実際に得たものを実践する。
そこの試行錯誤を粘り強く繰り返すことがなければ、結果も出ないし上達もない。
これはあらゆることの習得でいえることだと思います。
先日の傾聴レッスンでも、実際に逐語検討に取り組んでいる受講者は、ロールプレイ一つとっても、上達していました。
聞く姿勢も違うし、反応するポイントも違うし、反応の仕方も違う。
それぞれに変化と成長の跡がはっきりと見えます。
私自身、聞く力の基礎を確立できたのは、師匠のところで学んで5年が過ぎた頃でした。
しかし、養成塾の塾生の皆さんは、もっと短い月日でその実感を得られます。
私が試行錯誤して獲得したものを体系化したプログラムにしたからです。
師の吉田から学んだものを、より分かりやすく論理的に構成し直したからです。
これまでに臨床心理士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントを始め、いろいろな有資格者が学びに来られました。
しかし、どんな資格を持っているかいないかは、何も関係ありませんでした。
どのくらいカウンセラーとして年数やキャリアがあるかも、関係ありませんでした。
ただ、聞く力を持っているかどうか。
あるいはその力を獲得したいという意志をしっかり持ち続けているかどうか。
重要なのはそこだけでした。
1000回、1万回の面接経験があっても、正確に聞けないプロが山のようにいます。
しかし、100回逐語検討を徹底すれば、正確に聞く力が備わります。
数だけこなしても、必要な力が備わらなければ何も変わりません。
しかし、必要な力が備われば、自分より経験豊富な人間よりもしっかりとした対応が出来ます。
傾聴やカウンセリングはそういう可能性のある世界です。
ぜひ、自分が信じられる学習を粘り強く続けてください。
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追伸:
さらに、カウンセリングについて、こうした皆が知らない真実を、今回一冊のレポート(56ページのPDF無料レポート)にまとめました。
無料PDFレポート「誤解されている傾聴スキル8つの真実」
~形だけの傾聴から、人と心通わす傾聴へ~
こういう話は、おそらく他では知り得ないと思います。
本当の意味で、現場で使える傾聴を身につけたい、そのために必要なことを知っておきたいという方。
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