傾聴と応答の極意(カウンセリング)

カウンセリングにおける傾聴と応答の極意には共通する点があります。

この共通点が見えれば、傾聴力も応答技法も磨かれていきます。

臨床の世界の第一線で44年間生き抜いた師匠から学んだことも公開します。


【筆者プロフィール】
心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。コーチとしても様々な目標達成に携わる。
著書「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」は台湾でも出版された。
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傾聴の極意、実はたったこれだけだが・・

「(クライエントが)一番言いたいことは何か」

傾聴の極意とは、究極的にはこれだけです。

これが押さえられれば、それは傾聴できたということです。

ちなみに極意とは「奥義・秘訣」という意味です。

「一番言いたいことは何か」がわかればいい。

では、こんな単純なことを、なぜ極意というのか?

それは、ほとんどの人ができないからです。

傾聴力とは

「一番言いたいことは何か」の中には、このような観点も含みます。

「一番伝えたいことは何か」

「一番訴えたいことは何か」

「一番わかって(理解して)ほしいことは何か」

「一番問題にしている(したい)ことは何か」

こうした観点で目の前で話している人の話を一言一句漏らさず違わず正確に聞く。

これが傾聴ですし、これができれば良いわけです。

この一点にいかに集中し続けられるかなんです。

ですから「傾聴力」とは「クライエントの話を正確に聞く力(聞ける力)」となります。

応答の極意は傾聴にあった?

私の傾聴レッスンでは、そのために受講生にたくさんやって頂くことがあります。

それは「応答演習問題」です。

実際の逐語記録を使い、応答を考えてもらうわけです。

こうした演習をやっていく中で、受講生の皆さんは、応答を一生懸命考えます。

しかし、そうしていると「あること」が抜け落ちてしまいます。

そのあることこそ、傾聴なのです。

どういうことか?

演習問題は紙に書かれた逐語記録なので、この場合は「正確に読む、読み取る」ということになります。

どういう応答を作成しようかと考えるあまり、正確に聞く(読む)、傾聴するということが疎かになるんです。

こうした迷走のプロセスは、ほぼ全員が経験します。

なぜこれが迷走なのか?

答えはこうです。

傾聴できないと、応答って出てこないんです。

正確に聞けていないと、適切な応答は生まれないんです。

応答技法のカギは傾聴にありき

つまり「一番言いたいことは何か」がわからなければ、適切な応答にはたどり着けないんです。

だから、たとえそれが応答演習であろうと、先ずは「一番言いたいことは何か」を押さえる。

ここに全力投球、全集中することが必要になります。

もちろんこれは演習問題だけの話ではなく、実際の会話やカウンセリング・コーチングでも同様です。

そう、先ず「傾聴ありき」になります。

常に「一番言いたいことは何か」になるんです。

私は今も、カウンセリングやコーチングでこの「一番言いたいことは何か」に全集中します。

そして、クライエントが何を一番伝えたかったのか、それを自分は充分にわかっているかのみ、意識します。

カウンセリングはもう20年以上やってきてますが、未だにその意識を大切にしています。

これが師匠から学んだカウンセリングや傾聴の奥の深さ

臨床歴44年で生涯を閉じた私の師匠はカウンセラーになってから25年間はとにかく傾聴したそうです。

師匠の言葉を借りるとこうです。

「私は最初の25年間は、とにかくひたすら聞いたんだ」

そう考えると、私なんぞはまだ20年ですから、まだまだ傾聴のレベルは未熟なんです。

でも、そういう師匠がいたからこそ、20年やってもどこか自分のことを「ひよっ子」「青二才」と思える。

これは、実に幸せなことだなといつも思います。

傾聴、ホントに奥が深いですよ。

傾聴レッスンで逐語検討している受講生はその「深さ」を、身を以って実感しているはずです。

でも、そういう実感を人生の中でもてること、それも私は、幸せなことだと思うんですよね。

そういう意味では、自分にとって尊敬できる人の存在、師匠、恩師、メンターを持つことは大切です。

信頼できる師がいた方が、自分自身が人間的に成長できます。

傾聴力も、結局は「人間力」ともいえますから。

師匠自身のカウンセリング解説による応答の授業

吉田のところには五年間師事していました。

本当はもっと師事している予定だったのですが、吉田が病に倒れ、亡くなってしまったので5年となりました。

吉田のもとで学んでいる間はいろいろなことを教えてもらいました。

また口数の少ない先生でしたので多くは語らずということもあり、その分私は自分で学び取ろうと必死でした。

言葉少ない語りからいろいろなことを読み取ろうとしたものです。

しかし当時はまだ力がなかったために、吉田が言わんとしている事の真意をくみ取れないこともありました。

例えばある日、吉田がカウンセリングの応答について語ったときのことです。

ある高校生とのカウンセリングの記録を用いた授業でした。

それは吉田の著書「子どもが本心を語るとき、閉ざすとき」にも掲載されているカウンセリング記録でした。

両親が喧嘩ばかりして、それで気持ちがすさみ問題行動を起こしている高校一年生の男子。

親に連れられて来室したその高校生とのカウンセリング記録です。

吉田の手元には、その音声記録も残されていたのです。

だからそのときは、その音声記録を聞きながら吉田自身が解説を行いました。

高校生の話と吉田の応答、その一つ一つを解説して行きました。

吉田の解説はこうでした。

応答する時は何も考えていない?

カウンセリングの冒頭のやり取りが少し済んだところで、吉田は本題に舵を切ろうと高校生に働きかけます。

そのときはかなり意識的に「踏み込もう」と決断をしたそうです。

しかしその後のやり取りにおける応答については、「何も考えていない」というのです。

それ以降の応答一つ一つについて吉田に言わせると何も考えずに勝手に言葉が出てくると言うのです。

そういう流れであっても、後で自分で録音を聞き返してみると「まあ、こんなもんだろう」という感じになるのだとか。

つまり無意識に勝手に言葉が出てくるような応じ方であってもカウンセリングの出来としては充分だと言うのです。

私はこの解説を聞いたとき「勝手に言葉が出てくる」とか「何も考えてない」ということがよくわかりませんでした。

勝手にとか何も・・・なのに応答は適切、そんな魔法のようなことがあるんだろうかと思うほどでした。

しかし何年か経って自分も臨床経験を重ねていくとその真意が分かるようになりました。

耳で聞かずに心で聞け、心で聞かずに「気」で聞け

なるほど「何も考えてない」「勝手に言葉が出てくる」とはこういうことなんだなと理解ができたのです。

応答の際に、いちいち「どう言おうかな」とか「どう返そうかな」などと考えているようではダメなんです。

私なりの表現をさせてもらうならば、話を聞きながら「なるほど、こういうことか」という言葉の出し方になります。

かつて吉田は別の著書において「心で聞かずに、気で聞け」という荘子の言葉を引用していました。

その「気で聞け」とは、先の「何も考えずに勝手に」に通じるのです。

そしてこれは魔法でも何でもなく、人間の神経が研ぎ澄まされた状態で起こる反射神経の反応ともいえるでしょう。

真の傾聴、真の共感的理解が実践できる人間ならこの感覚は実感をもって理解できるはずです。

吉田自身は著書の中で「自分は心で聞くと気で聞くを行ったり来たりする」「まだまだ未熟である」と自らを評していました。

しかし、研ぎ澄まされた吉田の面接録音を実際に聞いた際には、終始この「気で聞く」対応になっていました。

私なんぞは、それこそまだまだです。

未だ、気で聞くということに自分をもっていくのに、かなりのエネルギーが必要になる始末です。

しかし気で聞く、つまり「何も考えていない」状態が理想ということは自らの経験においても実感はできます。

カウンセリングは実に奥が深いものです。

こうした感覚、実感、反射神経を磨くというところにいろいろな発見が生まれていきます。

ぜひ、そうした奥の深い学習をしてみてください。

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心理カウンセラー・臨床カウンセラー養成塾 塾長 鈴木雅幸(コーチ・企業研修講師)のプロフィール

台湾でも出版された「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」の著者で、心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。
コーチとしても様々な目標達成に携わる。
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