カウンセリングではクライエントの話した言葉をオウム返ししましょう?
20年以上カウンセリングをしているカウンセラーからすると、これは現場では全く通用しないデタラメナ教えです。
来談者中心療法のカール・ロジャーズは、そんなことは言っていないしやっていません。
では、なぜオウム返しがダメなのか。
どんな応答が正しくて、どのように応答は身につけていくものなのでしょうか。
【筆者プロフィール】
心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。コーチとしても様々な目標達成に携わる。
著書「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」は台湾でも出版された。
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もくじ
オウム返し、繰り返しは応答ではない
私はいつも、カウンセリングの応答はオウム返しではないとお伝えしています。
また、相手の言葉を拾って繰り返すのも間違いだと言っています。
なぜ、これらが間違いなのか?
この対応の一番の問題は、相手(クライエント)の言葉を切り取るところです。
切り取って繰り返すということそのものに、大きな問題があります。
それは、人はそもそもなぜ話をするのかということが、わかっていないからです。
なぜ私たちは話すのか
そもそも私たちは、なぜ話をするのでしょうか?
そういう「そもそも」というところ、考えたことがありますか?
なぜ私たちが話をするのかというと、それは「伝えたいこと」があるからです。
誰かに何かを伝えたい。
だからその誰かに話をするのです。
伝えたいことがあるので、話をするという行為を選択します。
そして話をするというのは言語を使っての伝達行為だといえます。
言葉を用いて相手に伝えたいことを伝えようとします。
話を聞く、理解するメカニズム
伝えたいことは時には複雑であったり、情報量が多かったりします。
だからそれを文法のルールに則って組み立てて話をします。
その構成要素の単位としては段落があり、文があり、接続詞や助詞などがあり、そして単語があります。
こうした要素が文法というルールに従って組み合わされ、様々な意味を構成し、話しにも筋が生まれます。
その結果、話終わった時点で伝えたいことが伝わっているというのが理想。
だから聞き手はそれらの要素を全て正確にインプット(傾聴)し、意味にまとめ、全体的な理解をし、相手が伝えたいことは何かを把握します。
そういう行為が「聞く」「理解する」ということになります。
なぜ「オウム返し」「繰り返し」が間違いなのか
言葉や表現を切り取って投げ返す「オウム返し」「繰り返し」は、このような構造、流れ、やり取りを全く無視したものになります。
だから私は「オウム返し」「繰り返し」をやたらと乱用することは「間違っている」と断言しているわけです。
カウンセリングやコーチング、様々なセラピーのセッションでは、一番問題になるのは「投げ返し(応答)」です。
相談者やクライエントの話を聞いた後、カウンセラーやコーチ、セラピストがどんな言葉を投げ返せばいいのか・・という場面ですね。
ここでどんな言葉で応じられるかで、そのセッションの成否が決まっていくからです。
だから応じる側はそこに難しさ、緊張感、戸惑いが生じます。
「オウム返し」「くり返し」は妥協の産物
だから応じる側はそこに難しさ、緊張感、戸惑いが生じます。
そこで求められるのは的確な判断と適切な投げ返しです。
難しいからといって「オウム返し」「繰り返し」を続けるのは単なる妥協の産物でしかありません。
いえ、妥協どころか、それまでのクライエントの行為をぶち壊すことでしかない。
だから、セッションは行き詰まり、クライエントの信頼を得られないわけです。
伝えたいことがあるから話をしているのに、それを一向に受け止めてもらえない。
それではセッションを受ける意味を、クライエントは感じることができません。
アドバイスをするにしても、先ずクライエントの伝えようとしていることがあります。
それを正確に聞き、的を射た理解をしない限り、適切なアドバイスすらできないはずです。
ほとんどのカウンセラーやコーチ、セラピストが、この対応が十分にできていないのは問題です。
私が傾聴トレーニングで、徹底して正確に聞く訓練をしているのも、相手が伝えたいことを正確にインプットする必要があるからです。
正確に聞けなければ、何も始まらないということが、ここまで読んでご理解頂けると思います。
ぜひ「オウム返し」「繰り返し」ではない、適切な対応を身につけてください。
カウンセリング応答はできるだけ短い方がよい
カウンセリングの応答は、できるだけ短い方が良いです。
なぜなら、長いと相手が効くのが大変だから。
長ければ長いほど、応答がクライエントに入っていかない。
聞くのが難しくなすからです。
だからカウンセラーの応答は簡潔で短いのが基本。
必要最小限の語数で応じるのが大切です。
短ければクライエントも理解しやすいので、応答がカウンセリングに活かされやすくなります。
応答がなかなか短くできない受講生
先日も「傾聴グループレッスン」を行いました。
ロールプレイ演習を行い、そのやり取りを録音し、再生しながらチェック。
クライエントの話の内容や聞き手の応答を細かく見ていきました。
今回もいろいろな検討課題が出ましたが、その一つとして話題になったのが、応答が長くなってしまうというもの。
以前から言ってますが、応答は必要最小限の語数で応じるのが基本です。
なぜなら、応答が長いとわかりにくくなり、クライエントも理解できなくなるからです。
ところが、応答を短くするというところで、結構苦労することがあります。
今回の参加者は、私のレッスンやセミナーなどをかなり受けている人もいました。
ですので、比較的短い応答で応じてはいたのですが、私は「もっと短くできますね」というアドバイスをしました。
ではどうすれば応答を短くできるのか。
私は「端的な応答」といっているのですが、簡潔でわかりやすい応答にしていく秘訣は何か?
答えはこうです。
応答を短くするコツ
相手の話をしっかりと理解できていればいるほど、応答は端的で短くなります。
私たちはしっかりと理解できたことに対しては、短く、そしてわかりやすく説明できたりしますよね。
しっかりとした理解ができていれば、応答は自ずと必要最小限の語数になっていきます。
もちろん、そこには必要最小限にするスキル、適切な言葉を選ぶスキルも必要です。
しかし、その「もと」となる理解がなければ、応答はまとまりません。
相手の話に対して的確でしっかりとした理解が持てていることによって、端的な応答で応じられるようになります。
応答はボキャブラリーが必要?
応答ということでいうと、よく「私はボキャブラリーがないから」という人がいます。
しかしこれも根本的な問題ではありません。
極論すると、中学生程度のボキャブラリーでも十分に対応できます。
これもボキャブラリーは無いよりはあるに越したことはありません。
しかし、ボキャブラリーとはその程度の問題であり、そうではなく自分はしっかりとした理解が持てているのかにこだわるべきです。
そうすれば、中学生程度の語彙で十分で、何もわざわざ難しい言葉を用いることもないのです。
応答が上手なカウンセラーの特徴
補足すると、しっかりとした理解を持つためには、そもそも相手の話を正確に聞くことが必要になります。
正確に聞けている前提がないと、しっかりと理解するということも成り立ちません。
ですから、結局「正確に聞く」ということが、全ての入り口になってきます。
応答が上手なカウンセラーは正確に聞く力をもっているんです。
応答が上手くいかないという人のカウンセリングや会話をチェックしていくと、ほとんどの人が「正確に聞けていないから」ということがわかります。
逆にいえば、正確に聞くことさえできれば、的確な理解や適切な応答が可能となるわけです。
正確に聞く力がついてくると、応答が上達していきます。
正確に聞けて、結果、応答が良くなる。
その間には「しっかりとした理解」があります。
先ずは正確に聞くというところの正確さの精度をあげることです。
その上で、自分はそもそも「聞く」「理解する」「応じる」のどこで躓いているのか。
「聞く」「理解する」「応じる」のそれぞれの精度はどの程度なのか。
そういった観点でぜひチェックしてみてください。
応答訓練は逐語記録、録音記録を用いる
但し、チェックの方法は「記録学習」が不可欠。
自分の会話やカウンセリング、ロールプレイの録音記録や逐語記録、もしくはその両方を用いないとチェックはできません。
そして、そうした記録を厳密に指導できる指導者と一緒に続けていくことをお勧めします。
この学習を続けると、例えば週1回で3か月もやれば、確実にレベルアップを実感できるようになります。
皆さんが思っているよりも、比較的短期間で「上達実感」を得られます。
そして、一つの上達は別の上達課題をもってきます。
一つ一つ、その課題と真摯に向き合うことで、学習や経験を積めば積むほど、上級者になっていくことができるのです。
あいづち、うなずきは高度なカウンセリング技術
応答ということでいえば、あいづち、うなずき、繰り返しがあります。
あいづち、うなずき、実はこれらはとても高度な技術なんです。
皆さんはおそらくこれらをカウンセリングのイロハ、基礎的な技術だと教えられてませんか?
カウンセリングや傾聴を学ぶ上で一番最初に講義を受けるかしれません。
ところが、このあいづち、うなずき、繰り返しというのは、かなり力を試される高度な技術です。
もっというとカウンセリングの成否を左右する重要な要素です。
このあいづち、うなずきを見れば、そのカウンセラーの実力がわかるほどです。
あいづち、うなずきでカウンセラーの実力がわかる?
あいづちやうなずきによって、そのカウンセラーの力がわかります。
なぜなら、力のあるカウンセラーは、これらによってカウンセリングを深めていくからです。
つまり同じ「はい」や「うん」でも、経験の浅いカウンセラーと力のあるカウンセラーとでは、
その深さや響き、与える影響がまるで違ってきます。
あいづちやうなずきがいつ、どのタイミングで出るか。
どんな感じのトーンになるのか。
そのあいづちやうなずきで何が伝わるのか。
こうしたポイントが重要になります。
これらはストレートに磨いていける技術ではないんです。
全体的にトレーニングによって底上げされる要素。
様々な技術や力がレベルアップしていく中で磨かれてくる技術といえます。
繰り返しもかなり高度な技術であり、非常に限られた場面でしかつかわれないものです。
「くり返し」という技術
ちなみに繰り返しについて、こんな風に教わったことはないでしょうか。
「クライエントの言ったことの中で重要そうなこと、情緒を含んだ言葉、言いたいポイントなどの言葉や文章を繰り返す。」
「繰り返すことでクライエントが話を聴いてもらえているという実感につながる」
大変残念ですが、これらは間違った教えです。
少なくとも私が20年以上の臨床の中で、このようなことは全く言えません。
繰り返しが有効な場面は、こうした場面ではない2つの場面に限定されます。
この2つの場面については、また別な機会にお伝えします。
いずれにしても「繰り返すことでクライエントが話を聴いてもらえていると実感する」なんてことはありません。
実際にやってみたらすぐにわかります。
もし、これをベースにロールプレイなどの実技訓練をしているとしたら、それはもう「茶番」でしかありません。
応答の基本は繰り返しではなく言葉を変えること
クライエントが聞いてもらえたと実感できるのは、言葉を繰り返したからではありません。
自分が本当に伝えたいことを正確に深く理解されたと実感した時です。
そのためには、カウンセラーの応答は繰り返しではなく、クライエントとは違う言葉に置き換えることが必要になります。
具体的な例を¥を用いて、以下の動画で解説しています。
いずれにしても、あいづちやうなずき、そして言葉の繰り返しというのは初歩的どころか上級者が実践する高度な技術の一つです。
しかし、これらを高度に活用できるようになると、カウンセリング全体が締まり、深まりや進展も早く訪れるようになります。
【まとめ】正しいカウンセリング応答
日本ではいつの頃からか、カウンセリングの応答は相手(クライエント)の言葉を切り取って繰り返せ。
オウム返しがカウンセリングだなどと教えられるようになりました。
しかし、それは茶番であり、間違いです。
カウンセリングの来談者中心療法を創始したあのカール・ロジャーズでさえ、オウム返しなど一つもしていません。
言葉の繰り返しは非常に限定的な場面でのみ有効で、基本はクライエントの言葉とは違う言葉で返します。
違う言葉なのにクライエントの伝えたかったことと同じこと、それ以上にピッタリくるもの。
これがプロカウンセラーの応答です。
こちらの記事も参考にしてください↓
無料PDFレポート「誤解されている傾聴スキル8つの真実」
傾聴・カウンセリングについて、こうした皆が知らない真実を、今回一冊のレポート(56ページのPDF無料レポート)にまとめました。
無料PDFレポート「誤解されている傾聴スキル8つの真実」
~形だけの傾聴から、人と心通わす傾聴へ~こういう話は、おそらく他では知り得ないと思います。
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