心理カウンセラーの応答が機械的だったり不自然だったり無理矢理ではいけません。
適切な応答はクライエントの心に響き、胸に刻まれ、温かく心を揺り動かしていくもの。
カウンセラーの応答、カウンセラーの言葉は、カウンセリングの命です。
ところが、多くのカウンセラーや学習者がこうした応答をどう投げ返せばいいのかわからず苦労しています。
そこで、真に適切な応答はどうやってカウンセラーの内側から生まれるのかについて、以下に解説します。
なぜ応答(言葉)に詰まってしまうのか
「言葉が出てこない」
カウンセリングの勉強で、また実際のカウンセリングでぶつかる壁。
まさにそれがこの「言葉が出てこない」という壁です。
カウンセリングの面接をしていると、クライエントに対して言葉が出てこない。
どんな言葉を返したら良いか、わからないというものです。
もちろん、経験の浅さからくる問題でもあります。
しかし、経験の問題を抜きに考えた場合、言葉が出てこないのには、ある一つの原因が考えられます。
では、その一つの原因とは、いったい何か?
言葉が出てこないというのは、クライエントの話や訴えを聞いた後・・ということです。
つまり、クライエントの話を聞いて、それをどう受け止め、何を感じたのか?
どう聞き、どう理解できたかがカウンセラーの言葉に反映します。
ということは、正確に聞けていることとしっかりと(深く)理解できていること。
カウンセラーが言葉でリアクションを取る際には、それが大前提となります。
つまり、このような感覚を持てない状態で言葉を出そうとするから、出てこなくなるのです。
そして、ここでよく考えてください。
言葉を出そうとする。
言葉自体を出そうとする。
ここに「無理」が生じているということにお気づきでしょうか?
クライエントを立ち直らせる応答は頭で考えるのではなく心で感じた「実感」から生まれる
ここからは感覚的なお話になります。
カウンセリングの場合、言葉というのは出そうとするのではなく「出てくる」ものです。
カウンセラーがクライエントの話を聞いて、そこから何か心動かされる感覚を覚え、それが実感を伴った言葉になる。
カウンセラーの応答は、これが基本となるわけです。
以前、私のクライエントの方(30代女性)のカウンセリングでのこと。
仮にRさんとしましょう。
Rさんは面接の中で、自分のこれまでの半生を振り返っていました。
思うようにいかず、うつになり、その時の苦しみを切々と語ってくれました。
また、周囲になかなか理解してもらえないジレンマや、人間関係での苦労についても、詳細に打ち明けてくれました。
そこから私が一番に感じたこと。
それは、Rさんの「真剣に生きる姿」でした。
Rさんの人生は、Rさんの思い描いたものとは、大きく違っていました。
それどころか、苦難の連続でもあり、将来も決して楽観できる状態とはいえませんでした。
しかし、今、目の前にいるRさんは、真剣そのもの。
自分の人生を、そして自分自身を少しでも変え、成長したい。
Rさんの苦労、苦しみ、心の痛みの奥に、私が最もヒシヒシと感じたのは、Rさんの真剣に生きる姿そのものでした。
そうした実感が私の心を静かに揺り動かしていきました。
カウンセリングは、カウンセラーの心がブレては上手くいきません。
しかし、相手の人間性、その深い部分にふれた時に起こる感覚。
静かに揺り動かされるその感覚は、むしろ大切です。
私はその感覚を元に、自分の内側から自然に出てくる言葉を口にしていきました。
Rさんの真剣に生きようとする姿にふれ、静かに心動かされた感覚を率直に言葉に変えていきました。
言葉が出てこないという原因の一つは、この感覚が生まれていないことでもあるのです。
話の内容(事実)の理解はもちろん、クライエントの人間性、その全体に接することも大切です。
クライエントに対するのではなく「接する」ことが必要
そして、その姿に「いい」とか「悪い」とか「すごい」とか、こうした価値判断を挟まないことも重要です。
「あなたすごいじゃない」という言葉が出てくるとしたら、そこでは既にカウンセラーの価値判断を露呈していることになります。
また「すごい」「がんばってるね」というカウンセラーの言葉が、クライエントに余計なプレッシャーを与えることもあります。
言葉にするのはカウンセラーの価値判断ではなく、あくまでもクライエントの経験の世界です。
そして、その世界をカウンセラーがどのように味わったか?
この感覚を言葉にできるかどうかです。
そして、カウンセラーの味わい方が、クライエントの感覚に近い場合。
その時は、クライエントはカウンセラーの応答を快く受け入れてくれます。
カウンセラーが磨くべきは、この味わい方であり、味わうための感覚だといえるかもしれません。
「なにかアドバイスしなきゃ」
「なにか気づきになることを言わなきゃ」
「励ましになる言葉を伝えなきゃ」
こうした発想で言う言葉は、思いのほかクライエントの力にはなりません。
その場では「ありがとうございます」と言ってくれるかもしれませんが、クライエントの心に残るものは、あまりない場合がほとんどです。
そして、こうした発想でいる限りは、それこそ言葉が出せなくなります。
クライエントの人間性、クライエントの生きる姿勢、そうしたものに深くふれ、そして味わっていく。
カウンセリングでカウンセラーが突き詰めていくものの一つは、この「味わい」なのではないかと思います。
カウンセラーが全身でクライエントの経験の世界を味わおうとする。
その姿勢や気持ちは、クライエントには必ず伝わり、そこに厚い信頼関係が生まれるのではないか。
私はクライエントの方々にお会いするたびに、その意識を新たにしています。
カウンセリングの命は言葉と反射神経
カウンセリングというのは、言葉が命綱になります。
言葉により救われ、言葉により精神機能の回復が起こります。
クライエントはカウンセラーの言葉に救われ、自らの口にした言葉に救われ、互いに交わす言葉のやり取りによって救われます。
安っぽい言葉はクライエントを失望させます。
クライエントの心が本当の意味で動いていく言葉であり、言葉のやり取り。
それがカウンセリングだといってもいいでしょう。
私の師匠であった吉田哲は、クライエントの心を深く動かす言葉と言葉のやり取りができる人でした。
そして、そのやり取りの達人でもあり、その技術を論理的に説明する達人でもありました。
また、ケースの見立ての力は飛びぬけていて、論理性を徹底的にアセスメントに持ち込んだそのノウハウの完成度は、本当にただただ圧巻でした。
その吉田から学んだことを、私なりにさらにかみ砕き、細分化してお伝えいている場が、臨床カウンセラー養成塾のセミナーやレッスンです。
吉田がほとんど反射的に対応していた部分を、論理的に分解して説明しています。
そうすることで、受講生の皆さんは少なくともそのメカニズムは理解されます。
ただ、理解してからが本当の勝負で、そこから「それを自分のものにする」までには、それ相応の時間と労力が必要なのはいうまでもありません。
養成塾では、そのためのプログラムやトレーニングまで用意しています。
言葉はカウンセリングの命綱である。
この事に関して、もう少し説明を加えます。
確かなカウンセリングはクライエントの思考を変える
人は言葉や文章を使って思考している部分があります。
ものを考えている時は、無意識に自分の頭の中で独り言をいっているような感じです。
全ての思考がそうと断言できないのですが、思考は言葉や文章がないと難しいのです。
後は映像化して自分の中で想像することも思考に含んでいいのかということはありますが・・・・
いずれにしても、この思考や想像(想起すること)が、精神状態に大きな影響を与えます。
つまり、その内容が否定的であるほど、そしてその時間が長いほど、精神状態は乱れやすく、ストレスは強化されやすくなります。
この悪循環が続くことでやがて、うつ状態へと移行していきます。
その際に、こうした内的現象が言葉や文章で成立している部分が小さくありません。
ですので、その言葉や文章が肯定的であるほど、この悪循環から抜け出せる可能性が出てくるともいえるのです。
そのためには、外からそうした肯定的で客観的で、論理的で安定した言葉や文をインプットすることが有効です。
しかも、それはただ単体で肯定的な言葉や文章を投げかけられるだけでは弱いのです。
そのインプットは、クライエントの思考の流れにつながっていくことが重要です。
クライエントが口にする言葉や文章、カウンセラーから投げ返された言葉や文章。
それらが一連の「流れ」の中で入っていくからクライエントに受け入れられやすくなります。
ですから、言葉のやり取り、つまり「対話」を通して自然とこうしたことが起きるようにするのがポイントになります。
カウンセラーの応答が、クライエントの言葉を受け止め、しっかりと理解した上で投げ返されていること。
これがクライエントの思考改善にはとても重要だといえるのです。
結局カウンセリング・傾聴で一番大事なことは
質問・アドバイス・説明・励まし・説得・分析・というのは、基本的にクライエントにとっては否定的な働きかけになりやすい。
また、クライエントの伝えたことや思いを肯定的に受けて・・・ともなりにくい。
どちらかというとそれらを分断するリスクが低くない。
そういう意味で質問やアドバイスが控えられているわけです。
ですから、これらのリスクより伝わる可能性の方が高いという判断ができれば、逆に質問やアドバイス等を積極的に行います。
そして、そろそろ結論になりますが、これらの見極めとこうしたやり取りにするには、先ずとにかく「正確に聞く」ことが出来なければ始まりません。
吉田が生前、とにかく「正確に聞くこと」「ひたすら聞くこと」と説いていたこと。
また、私も「傾聴とは話を正確に聞くこと、聞けること」と伝え続けてきていること。
それらは、こうしたカウンセリングの本質的な背景があるからです。
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こういう話は、おそらく他では知り得ないと思います。
本当の意味で、現場で使える傾聴を身につけたい、そのために必要なことを知っておきたいという方。
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